「任侠映画路線の残響が聞こえる」昭和残侠伝 破れ傘 しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
任侠映画路線の残響が聞こえる
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"昭和残侠伝" シリーズ第9作。
日本映画専門チャンネル「高倉健劇場」で鑑賞。
シリーズ最終作にして、東映任侠映画路線末期の作品だ。本作公開の翌年には、実録路線の第1弾となる「仁義なき戦い」が公開されることになる。その流れを知っているせいかもしれないが、キャスト的にもストーリー的にも総決算を思わせ、任侠映画路線の残響のような作品だと感じた。
鬼首一家の非道ぶりは史上最凶クラスで、思わず目を覆いたくなるような凄惨な所業が繰り広げられる。よく最後まで耐えたなと、秀次郎の堪忍袋の緒の強度に感心させられた。
安藤昇氏、鶴田浩二氏、北島三郎氏と、これまでの任侠映画路線を支えて来た名優たちが、鬼首一家によって無残な死を遂げていく。「任侠映画」が殺されているように思えた。
彼らの無念を背負って殴り込みを掛ける秀次郎と重吉の気迫は、これまでにも増して壮絶さがあり、立ち回りも血飛沫が舞い、返り血を浴びた鬼気迫る表情に圧倒された。
迫力の死闘の末、仁義を重んじ任侠の世界で生きる男ふたりを徹底的に美しく描き出したラストシーンが印象に残る。雪の中から顔を出す花にクローズしたラストカットが良い。
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