劇場公開日 1971年2月13日

「旦那は若いなあ、本当の恋を知らねえ。」修羅 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5旦那は若いなあ、本当の恋を知らねえ。

2024年3月4日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

原作、鶴屋南北「盟三五大切」(かみかけて さんご たいせつ)。南北と言えば、東海道四谷怪談でもそうだが、幾重にも張り巡らされたプロットの達人だ。まるで落語「持参金」ような筋書きがシリアス調に展開され、その尽きることないどんでん返しに手に汗握る。しかも、人物にしかスポットライトが当たっていないかのような演出が、物語のノワール感を駆り立ててくれるのもいい。
おまけに、はじめ、小憎らしいと思っていた小万と三五に対して、下僕が囚われたあたりから、なんだかどうも二人に情が傾きだしていたのはどういうわけか。それは唐十郎のうまさだろう。最後、「夏祭浪花鑑」の団七のような男ぶりだった。
史実として実際にあった薩摩藩士の公金横領事件が下地にあるこの劇作だが、この映画の中でも、次第に源五兵衛が女の色香に迷った間抜けにこそ、すべての元凶があるのだとその責任を問いたくなってくる。その身勝手ぶりも、中村嘉嵂雄のうまさだろう。「無一物中無尽蔵」いい言葉だ。その教養がありながら、女に溺れる。げに恐ろしきは男女の仲よ。

この世界を手元に置いておきたくてDVDを買った。ただ、小万の首を表紙のデザインにしてしまったのはネタバレ感が強すぎていただけない。

栗太郎