「任侠、破天荒、男と女の愛を乗せて」車夫遊侠伝 喧嘩辰 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
任侠、破天荒、男と女の愛を乗せて
加藤泰監督1964年の作品。
時は明治。
東京から大阪にやって来た車引きの辰。
俺の車は超特急。乗ったら最後。どんな人間様だってお荷物。
義理人情に厚いが、気性は荒く、喧嘩っ早い。
早速、同業者と揉め事。
その日も客と。勝ち気な芸者・喜美奴と口論。
彼女はやくざ親分の妾であったから、さあ大変!
しかし辰は、思いもよらぬ事を口にする。
この女に惚れちまった!結婚させてくれ!
普通だったらただでは済まされない。コンクリ詰めにされ、冷たい海の中へ…。
しかし、世の中全てに喧嘩売ってるような一本調子で威勢のいい辰に、親分も気に入る。
喜美奴もいつしか…。
親分も二人の結婚を承諾し、辰は伴侶を乗せてーーー。
ところが、まだまだ破天荒な辰の物語と、男と女の激愛。
ちょっとした思い違いなどで、くっ付いては離れ、くっ付いては離れを繰り返し…。ある夫婦の物語。
辰の弟分の車引き。その恋人。若いカップルの恋物語も。
任侠映画の醍醐味。
ある道場破りが勢力を伸ばし、彼らを脅かしていく。
悲劇が起こり、ラストは一対一。
漢な内田良平、美しい桜町弘子。両者の演技が光る。
演者は皆生き生きしていながら、明治という文明開化の荒波に呑まれていく。
娯楽のツボを抑えた加藤監督のさすがの職人手腕。
そしてどの作品でも、唸らされる構図がある。
本作は、ラストシーン。雪降る橋の上で、辰と喜美奴が二人だけの祝言を挙げる。
悲しくも、美しい。
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