「欣二と明と健と哲郎」ジャコ萬と鉄(1964) 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
欣二と明と健と哲郎
監督・深作欣二×脚本・黒澤明×主演・高倉健という夢のような顔合わせ!
しかも、共演・丹波哲郎、音楽・佐藤勝。
リメイクで、元は同じ黒澤脚本による谷口千吉監督の代表名作。
が、深作演出と高倉・丹波両名優の共演で、見応えある漢の映画になっている。
話の設定は冒頭で説明してくれる。
“北海道。三月。
鰊(にしん)の漁期が訪れると、
秋田から、津軽から、山から、畑から、
出稼漁夫(やんしゅ)の群れが集まって来る”
やんしゅである荒くれ者の二人の男、健さん演じる鉄と丹波演じるジャコ万。
健さんは若さ溢れる風来坊、丹波はふてぶてしい敵役といった所で、その対比も実にメリハリあり。
『網走番外地』でも共演しているが、本作ではがっつり組み合って、殴り合っての文字通り“漢二人の闘い”。
この二人の共演を見てるだけでも極上。
強いて言えば、アイパッチを付け、何処か陰のあるニヒルな丹波の方が役柄としての面白味で一枚上手。
単なる漢二人のアクション・ドラマに留まらず。
漁場を仕切る親方・久兵衛。
やり方は非道で、利益はほぼ独占、病人すら漁に出し、やんしゅからは不満爆発。
そこへ、因縁あるジャコ万が舞い戻り、修羅場に。
さらに、戦死したと思われた久兵衛の息子・鉄も還って来て…。
やんしゅたち第一の鉄。
傲慢な久兵衛。
復讐しか頭にないジャコ万。
命の危険すらあるニシン漁の現状、労働者階級、父子の愛憎、復讐劇…それらがまるで荒れ狂う北海の如くぶつかり合い、男たちの情念が北の極寒の海を灼熱の地に変える。
それでいて漁のシーンは意気揚々、各々のドラマも決着つき、後味悪さを残さない。
作り手も演者も、漢の魅力充分の娯楽作!
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