「物語の中の暴力を打ち砕くために」静かな生活 ねこたまさんの映画レビュー(感想・評価)
物語の中の暴力を打ち砕くために
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とても面白かったです。
私は名作だと思います。
渡部篤郎さんの演技が良かった。
また、今井雅之さんの演技も、終始不気味で何をするのか予想がつかない感じが良かったです。
意外だと思ったのは、終盤、兄妹に襲い来る暴力を切り抜けるために、兄妹は暴力で対抗するしかなかったこと。
大江健三郎さんの原作は読んでいない(一冊も読んでいない)ですから、同じようなシーンが原作にあるか否かは私は知りません。
同じようなシーンがあるのだとすれば、大江さんでさえ、物語の中の暴力を打ち砕くためには、同じくらいの暴力を持ち込むしかないということではないか。
そう思うと無力感に失望すると同時に、凡人である私が、物語の出口として望んでいたことを大江さんが描いてくれたことに、安堵する気持ちも持ちました。
暴力を強く否定する気持ちと、便利な道具としての暴力を求める気持ち。
矛盾する想いのどちらを人として選ぶべきなのか。
大江さんと伊丹十三さんから、難しい問いが課された気がします。
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