「取材の関係づくりの難しさと田中絹代氏の演技の凄味」サンダカン八番娼館 望郷 てつさんの映画レビュー(感想・評価)
取材の関係づくりの難しさと田中絹代氏の演技の凄味
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最初に天草の食堂で、圭子の同行者がサキに不用意な言葉を言い放ったのが気になったが、追いかけた圭子も、サキに謝罪しなかったけれども、家までついてきた圭子がサキの嘘に付き合ったことで、サキの圭子への信頼関係が芽生えていたが、次にやってきたときにも、なかなか訊きたいことは話してもらえず、1週間を無為に過ごしていた。3週間経って、圭子は取材の目的を果たし、隠していた目的を正直に話すと、サキは許すものの、号泣してしまう。『私は忘れない』の万里子と似たようでもあり、知りたい中身が深刻な問題という違いはある。圭子は取材のためにそれなりの代償を払い、その後、検証のために現地で墓探しをしていた。サキを演じた田中絹代氏の演技は凄味があった。若いサキを演じた高橋洋子氏の水揚げ前と後では、大きく風貌が変わっていた。水揚げ後も依然として客取りを嫌がったり、初な客に気を許したり、複雑な心情があり、大量で押しかける水兵たちの相手に茫然自失し、植民地の慰安婦だけが犠牲になったわけではない。故郷に錦を飾ったつもりでも、家族からは歓迎されなかった。これも悲しい。
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