「切ない初恋」さびしんぼう カ―タンさんの映画レビュー(感想・評価)
切ない初恋
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『好きになれ。思いっきり好きになれ。その人の喜びも悲しみも、みんなひっくるめて好きになれ』
主人公ヒロキ(尾見としのり)の父親役である小林稔侍のセリフにハッとする。
或いは、そのちょっと前のシ―ンで富田靖子が魅力的に好演する“さびしんぼう”が、こんなセリフを言う。
『人を恋する事は、とっても寂しいから、だから、私は“さびしんぼう”。でも、寂しくなんかない人より、私ずっと幸せよ』
大林宣彦監督の最高傑作『さびしんぼう』は、昔、誰もが経験したであろう片思いの切なさをまざまざと思い起こさせてくれる映画だ
とは言え、本作は完璧な映画ではない。
前半にあるギャグの部分はやり過ぎだし、入江若葉や樹木希林、小林聡美や岸部一徳の演技は悪ノリしている(俺はキライじゃないけど)。
しかし、後半の物語の急激な転換は見事としか言いようがない。
かつて、映画評論家の淀川長治先生は本作を“合わせ鏡の映画”と評していた筈だが、まさに言い得て妙だ。
ヒロキの百合子(富田靖子二役)への思いが、“さびしんぼう”のヒロキへの思いに変わり、やがて、ヒロキの“さびしんぼう”への思いが母親(藤田弓子好演)の初恋に重なるという重層的な物語の素晴らしさ
俺も本作を初めて観た時は、まだホントの恋愛も知らない中学二年生だったけど、あれから随分と時が立ち、いつか大人になってしまった。
だからこそ、冒頭に書いた小林稔侍のセリフが胸に沁みる。
恋愛とは、相手の現在も過去も全部ひっくるめて愛する事だから
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