劇場公開日 1985年4月13日

「【”永遠に連鎖する真実の恋”思春期特有のときめきやロマンチシズムを仄かな郷愁とともに描いた作品。”さびしんぼう”を始め、四役をこなした富田靖子さんの魅力にヤラレル作品でもある。】」さびしんぼう NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0【”永遠に連鎖する真実の恋”思春期特有のときめきやロマンチシズムを仄かな郷愁とともに描いた作品。”さびしんぼう”を始め、四役をこなした富田靖子さんの魅力にヤラレル作品でもある。】

2022年4月28日
PCから投稿
鑑賞方法:TV地上波、VOD

悲しい

知的

幸せ

ー 写真が趣味の高校生・ヒロキ(尾美としのり)は、憧れの美少女・百合子(富田靖子:不老の人である。今でも美しさは変わらない。)をレンズ越しに見つめ、「さびしんぼう」と呼んでいた。
  ある日、実家の寺の本堂を掃除していた彼は、母(藤田弓子)の古い写真をばらまいてしまう。するとその日から、ピエロのような格好をした謎の少女(富田靖子:4役)が現れて…。ー

◆感想

 ・ある日突然、ヒロキの前に現れたピエロのような格好をした謎の美少女は”いったい誰?”と言う疑問を見る側に抱かせつつ、”健全な”高校生活を送るヒロキを軸に物語は進む。

 ・ヒロキの父(小林稔侍)は僧侶で、ヒロキのナレーションによると、”何を考えているか分からない・・”と呟かれるが、ヒロキと無理やり風呂に入るワンシーンで父の善性が分かる。
 そして、母の事を愛していることも。

 ・ヒロキの母も”勉強しろ”と口煩い、とヒロキのナレーションでは語られるが、母が如何にヒロキを大切にしているかが良く分かる。

 ・憧れの美少女・百合子とヒロキの関係性も何だか切ない。
 - ”私の側面だけを観ていて・・。”貧しき私生活を知られたくない百合子の乙女心・・。-

 ・今作が、何より魅力を放っているのは永遠の16歳である、ヒロシが新たに”さびしんぼう”と名付けた白塗りの表情でピエロのような格好をした謎の少女を演じた、富田靖子の百合子役の抑制した演技とは違うお茶目で可愛らしい演技である。

 ■白眉のシーンは水に塗れると”死んでしまう・・”と言う”さびしんぼう”が、百合子に会いに行ったヒロキを雨の降る寺の階段で待っているシーンであろう。
  ヒロキは彼女に優しく上着を掛け、”さびしんぼう”はヒロキの肩に顔を埋める・・。

<全編に流れる、ショパンの「別れの曲」が意味する事。
 それは、大人になり僧侶になったヒロキの脇に座る女性(富田靖子)の姿と二人の子供であろう女の子(富田靖子)がピアノで弾くショパンの「別れの曲」を聞けば、分かるのである。
 今更ながらではあるが、佳き作品である。>

NOBU