「「そんな光景を皆さんは何とお考えになるだろうか」」さびしんぼう ヤッターマンさんの映画レビュー(感想・評価)
「そんな光景を皆さんは何とお考えになるだろうか」
先のレビューで、ハッピーエンドとなったことが納得できないと書いていらっしゃる方がおいでますが、ご安心下さい。大林宣彦さんは妻となったのが百合子かどうかは作者としては答えを出していないとおっしゃておられます。それは、ヒロキのナレーションで「そんな光景を皆さんは何とお考えになるだろうか?」と一人一人に委ねる事で締めくくっておられるのだど思います。ところが、ラストがあのオルゴールであった事から大半の方が妻となったのが百合子であると思ってしまった。いわゆる映画がひとり歩きをしてしまったようです。監督としては結末を明確にしていないと言う事です。では、監督としてではなく大林宣彦さん御自身としてのあのラストシーンの思いとは、二人の恋は成就しておらず、妻や娘が百合子に似て見えるそんな日にはヒロキの心には「別れの曲」が聴こえて来るのです。と言う事のようです。
この事は監督の書物、「a move book 尾道」に書かれております。
また、監督は百合子の家を娼家と設定しており、この事から身を引いたとなっています。それで「恥ずかしいから」とヒロキに送ってもらうのを拒んだようです。そしてこの明らかにされていない百合子の反対側の顔が後の
「はるか、ノスタルジィ」で石田ひかりさんが演ずる三好遥子の物語となって行きます。
物語としての繋がりはありませんが、「さびしんぼう」の完結編とされたようです。
こちらは、1997年度版「さびしんぼう」のレーザーディスクのライナーノーツに書かれております。
小林聡美さんの「廃市」のDVDの映像特典 監督インタビューでは原作者の福永武彦さんの「草の花」について触れ、ショパンのピアノコンチェルト第1番が登場すると話しておられ、「さびしんぼう」には「別れの曲」を、そして「はるか、ノスタルジィ」の事を
「さびしんぼう」のその後の物語と言われる「はるか、ノスタルジィ」のテーマがまさに「草の花」と同じショパンのピアノコンチェルト第1番であると紹介されています。
この中で監督にとっては福永武彦さんの小説やショパンの伝記映画「別れの曲」の影響が多大であるように話されています。「別れの曲」をモチーフとされているのならば、「さびしんぼう」においてヒロキと百合子の恋が成就することはなかったでしょう。もし、「廃市」のDVDをお持ちならばチェックしてみて下さい。