「見たかった座頭市対ブルース・リー」新座頭市・破れ!唐人剣 TRINITY:The Righthanded Devilさんの映画レビュー(感想・評価)
見たかった座頭市対ブルース・リー
香港映画のアクションスター、ジミー・ウォング(王羽)を迎えてのシリーズ初の日中合作映画。
開巻早々、大映ではなく東宝のオープニング・ロゴの登場にまず驚かされる。
映画が公開されたこの年の暮れ、大映が遂に倒産。映画産業の斜陽に加え、ワンマン経営者、永田社長の無策ゆえの顛末だった。
そんな混乱期に製作された本作も、話題作りが目的のもっとデタラメな映画かと思いきや、意外とまとも。
大陸から来たばかりの中国人剣士王剛(ジミー・ウォング)が偶然出会った同胞の大道芸人夫婦。「日本は素晴らしい…皆、親切」と王剛に語るが、南部藩の献上品一行の列を乱しただけで無礼打ちに会い、目撃した農民や旅人を口封じに殺した濡れ衣まで着せられる始末。
偶然、事切れる間際の大道芸人から遺児を託された座頭市は、その縁で王剛とも関わりを持つが、意思疎通が出来ないことから最後は対決を余儀なくされる。
これらの展開に何らかの寓意が込められているのは明白。決着後、双方の口から「言葉さえ通じていれば」と後悔の念が洩れる。
作品公開の翌1972年、賛否両論の声が飛び交う中、日中の国交が回復。保守的な永田体制の下なら、こんな内容に出来たかどうか…。
この作品、当初はブルース・リーが座頭市と戦う予定だった話は有名。当時のリーが日本ではまったくの無名だったため、ジミー・ウォングと差し替えられたが、リーとの対決を観たかったと思うのは自分だけではない筈。
市と行動をともにする唐人少年の名前は小栄。
音読みだと「ショウエイ」だが、劇中の中国の発音は「シャオロン」に聞こえる。
ブルース・リーの中国名も「リー・シャオロン(李小龍)」。厳密には子音が異なるため(アルファベットにすると栄がrongに対し龍はlong)実際のところは分からないが、「やっぱりみんな観たかった?!」と勘繰りたくなる。
香港映画特有の空中殺法(跳躍)と、日本の殺陣が最後まで噛み合っていなかった点がやや残念。
BS12トゥエルビにて初鑑賞。