「市と刀」座頭市鉄火旅 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
市と刀
シリーズ15作目。1967年の作品。
烏が不吉に鳴く下、足利に帰途中何者かに斬られ無念にも息絶えた男を看取った後、偶然目的地が一緒の陽気な旅芸人一座と共に、市は足利へ。
町は横暴なやくざが幅を利かせ、早速市はいかさま博打で大金をせしめる。
屋台で一緒になった老人と意気投合。そこへやくざ共が襲撃するが、いつも通り仕込み刀で瞬殺。
すると老人が刀をよく見せて欲しいと、自分の家へ招く。
その老人・仙造は元鍛冶職人で、何と市の刀は仙造の師が造った名刀。
しかし刀はすでに限界で、後一人斬れば折れるという。
折れるまで斬るか、それとも…。
市は刀を置く。
仙造の薦めもあり、堅気になる事も決意する…。
前半がいつもと違って面白い。
初めて仕込み刀にフィーチャー。バッサバッサ悪人共を斬りまくってきたが、無敵の武器なんてある訳ない。寿命はある。
苦楽を共にし、危機を乗り越え、コイツに何度も命を救われた。
市と刀の関係にしんみりさせられた。
宿場で得意の按磨として働く市。
男勝りのお志津が切り盛りする。
奇遇にもお志津は、市が道中看取った男の養女。さらに驚く事に、お志津の実父は仙造。
お志津は知らず、仙造は名乗り出ず、一筋縄ではいかない訳ありの人間関係。
やくざと見廻り役がやりたい放題。
見廻り役がお志津に色目を使い、仙造に名刀を造らせようとする。
やくざはお志津を拉致し、お志津の弟を殺し、仙造までも…。
仙造の家で預かってくれていた刀を手にする。後一人斬れば折れる。
が、その刀は…。
東野英治郎がさすがの名演。
藤村志保が凛とした美しさとしおらしさ。
チョイゲストでは、旅芸人の水前寺清子が歌声をサービスし、藤田まことがコミカル・シーンを請け負う。
クライマックス、樽の中に入れられグルグル回されるも、「回る目がねぇ!」と啖呵を切って、悪党どもを斬り捨てる大殺陣がハイライト。
後半はいつもの座頭市映画となるが、個人的には市と“相棒”の物語であった。
仙造が研ぎ、再び命を繋いだ“相棒”と共に、堅気になれぬ男の旅は続く。