座頭市の歌が聞えるのレビュー・感想・評価
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天知茂も佐藤慶も大好きな役者なんだけど…。
シリーズ化を決定付けた一作目以来、久々に天知茂が共演しているが、平手造酒を演じた前回ほどカタルシスも感銘も得られないのが残念。
市と太一少年との交流が物語の本筋だからか、天知演じる黒部との接点が乏しく因縁が深まらないことに一因があるが、悪役の佐藤慶ともども出番が少ないので印象薄い。
板鼻の権三役の佐藤慶は戸浦六宏とともに子供の頃、大好きだった悪役俳優。
登場場面少ないけど、毒々しくて狡猾で最期までシブとい。
TVシリーズの『子連れ狼』での烈堂や『新・必殺仕置人』最終回の辰蔵も忘れがたいが、天知茂の当たり役、民谷伊右衛門を演じた映画もあるらしい。
見てみたい!
舞台出身の本格俳優、浜村純が主人公同様、盲目の琵琶法師役で登場。
目を閉じているだけでいつもと印象が随分と変わるが、逆にシリーズ通して座頭役を演じ続けた勝新太郎の存在感、表現力にあらためて頭が下がる。
小川真由美が自分の知ってるイメージより若くて初々しい。
クレジットで確認できなかったが、若手時代の平泉成(当時、平泉征)出てたような気が。同年の大映作品『大魔神怒る』では、結構いい役もらってるんだけど。
名カメラマン宮川一夫による映像美は見事の一言。
陰影を強調した橋上の決闘の場面も素晴らしいが、行燈の明かりのもと、市がお蝶を按摩するシーンはさながら一幅の絵画。
座頭市に斬られる小道具のギミックは作品によってクオリティに差が出るが、本作は上々の出来映え。
市に刃元を斬られた権三の刀が鞘から滑り落ちる場面の仕掛けは、単純だけど息をのむ。
街道沿いの茶店の食事が二百文て、高くないか?!
ひとの金で飲み食いしたからって前提だからかな。
BS12トゥエルビにて視聴。
座頭市は歌いません
盲目の琵琶法師
撮影は宮川一夫。今回で2回目となるが、やはり他の作品とは一味違う。冒頭でのシーンは特に暗い中に総天然色を活かした巧さ。
一の宮の旅の途中、盲目の琵琶法師(浜村純)と出会う。二人のやりとりも絶妙。この琵琶法師の助言で、斬り捨てられた為吉の息子である太一に悪人を斬るところを見せちゃならないと心が揺らぐ市であった。しかし二転三転する法師の言葉。最後には『シェーン』のような子ども心をくすぐるようなエンディングへ・・・
女郎屋からお蝶(小川)を身受けするための50両のために座頭市を斬ると板鼻の権造に約定した黒部(天知)。やっぱり金のためだけの決闘は感情移入は難しい。お蝶が市を一晩泊めるなどとよろめいたことから、色恋沙汰をも盛り込めば面白かったのに。
斬らねばならぬ不条理
シリーズ13作目。1966年の作品。
道中一人の浪人とすれ違い、その浪人に斬られたであろう男・為吉から金が入った袋を「一宮宿の太一へ」と託された市。そこで茶屋を営む為吉の母親と息子と出会う。
一宮宿は平和な町だったが、最近になって板鼻の権蔵というやくざどもがやって来て、のさばり大荒らし、町人を苦しめている。市は二人や町を守る為、権蔵らと闘うが…。
そこへ現れたのが、例の浪人、玄八郎。この男もある目的を持って…。
何と言っても本作のトピックは、第1作目以来の出演となる天知茂。
さすがに平手造酒役ではないが、今回もライバルとなる玄八郎役。
天知氏が演じるライバル役にはドラマチックな背景あり。
玄八郎がこの宿場町にやって来た目的は、女郎屋で働く別れた妻・お蝶を追って。ようやく捜し出すも、50両が必要。
そこで用心棒として権蔵に雇って貰う事に。権蔵は腕の立つこの男に市を斬って貰う。
玄八郎は市に恨みはないが、斬らねばならぬ。
市も玄八郎と対する理由はないが、対せねばならぬ。
どうしてもお互い斬らねばならぬのか。ラストの市対玄八郎は名カメラマン・宮川一夫による逆光の映像が素晴らしく、名シーンだが、あまりの不条理さが胸を打つ。
斬らねばならぬのは今回のやくざども。
権蔵らの横暴は、シリーズのやくざの中でも極悪卑劣。
勿論クライマックスは市がこいつら外道どもを一掃するのだが…、
基本ストーリーは市が悪徳やくざ一家と闘うというお馴染みのものだが、玄八郎の件や権蔵らの横暴さで結構重苦しさが漂う。
それがまた(先述したが)宮川一夫の逆光の映像美にピタリとハマった。
それにしても、監督・田中徳三、音楽・伊福部昭、美術・西岡善信、権蔵役に佐藤慶が憎々しく、お蝶役に小川真由美が色気を漂わせて、何と豪華!
タイトルを見ると市が歌を歌うシーンがあるように思うが、実際はナシ。
代わりに歌うのが、道中出会った不思議な琵琶法師。
法師の歌が併せて、市に問い掛ける。
人を斬る市。何故、斬る?
斬る理由があって斬る市。今度は肯定する。
おかしな事ばかり言う。
…いや、おかしいのはこの世の中。
善人が苦しめられている。
悪人がのさばっている。
我が目的の為に斬り、命を落とす。
殺めてしまう自分…。
弱きを助け、悪を斬るならまだしも、不条理な事の為に斬るなら、まことに苦しい。
これまでになく重い雰囲気の座頭市
前作あたりから市は戦いを避けるようになる。
本作でも人を斬ることに苦悩する市の姿が映し出される。
勝新太郎シリーズものであるからこその、映画の中の存在でしかないはずである「市」が実在するかのような、彼の生き様を観ているかのようであった。
というのも、本作は全体的に色調が暗く、見せ場である殺陣は「マジックアワー」で撮ったかのような、薄暗い(朝方或いは夕暮れ)曇り空の下で展開される。これまでの座頭市になかった演出だ。
ギャグシーンも少ない。
ストーリーはいつものパターン(宿場町のヤクザを一掃)。
しかし、毎回新しい試みをするのが座頭市シリーズの魅力。本作もいつもと違う。わかりやすいハッピーエンドではなく、「降りることのできない殺しの螺旋」を彷彿とさせるような、重々しい雰囲気で終わる。
アメリカン・ニューシネマのようだった。ここまで重たいのは初めてじゃないかな?
お約束である殺陣は良いです。
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