座頭市血笑旅のレビュー・感想・評価
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赤ん坊
冒頭はめくらの団体。座頭市を追う5人組から市を隠す。その後も二度再会するが、なかなかいいポイント。
赤ん坊を父親の元に届ける旅をする市。スリのお香(高千穂)と出会ったことから道中ともにし、彼女を雇う。次第に母性に目覚めるお香が色っぽい。おっぱいを与えてくれればもっとよかったのに・・・おっぱいを吸わせたのは市だった(笑)。
父親は輿入れ間近のヤクザ者だった。借金のカタに女房に奉公させていたのだ。それでも素直に引き取ってくれればそのまま赤子を返しただろうに、自分の子ではないと言い張る親分だったのだ。自分で赤子を育て上げようと心に決めた市だったが、亡くなったおとよを供養してもらった際、和尚(加藤嘉)が「お前さん一人じゃ育てることはできない」と諌められる。そんな折、5人組の残党と父親の親分たちが襲いかかるが、市の弱点を知っていた悪党どもは松明を使い、炎攻めで周りを囲むのだ。それでも敵を倒し、本当の父親を許す市であった。
似たような話は結構あるが、もしやこの座頭市が原点なのか?とも思わせる人情ストーリー。ホロリときてしまうが、もうちょっと高千穂ひづるを見たかった・・・
おしめぐらいゆっくりさせておくんなさいや
幸せを失って心に穴が開いてしまったようなラストが胸をしめつける。座頭市のいいところが詰まった作品。おしめかえまくり人斬りまくりの赤子を連れての旅。スリのお香を斬る為に追ってきたサムライを話術と剣術でまるく収める市。おしめをかえながら博打する市。寝不足だからと商売女に赤ちゃん預けて一人で寝ようとするもやっぱり赤ちゃんが気になって寝れない市。名シーンばっかり。
後半、お香が改心して真面目になるよといって擬似家族みたいになったのも良かった。
他の誰よりも愛している赤ん坊の幸せを願って、最後は和尚に育ててもらうという選択をするのだけど本当に凄く寂しそうで泣けた。
子連れ市
シリーズ8作目。1964年の作品。
全26作ある座頭市シリーズ。当り外れあるのは当然。
本作はシリーズの中でも出色。
数人組の刺客に狙われている市。間違いから自分の身代わりに赤子を抱いた若い母親が殺された。責任を感じた市は赤子を父親の元へ届けようとする…。
何と言ってもキーは、赤ん坊。
次第に情が沸き、自分が育てるとまで強く思う市。
ひょんな事から同行する事になった女スリも自分の人生を考え直す。
堅気じゃない世界で生きてきた者が赤ん坊への愛情によって感化されていく姿がなかなか感動させる。
座頭市の話と行ったら基本、ふらりとある宿場に流れ着き、その町を牛耳るヤクザ一味とその用心棒を倒し、またふらりと去って行くアウトロー物だが、本作のような人情話もいい。
刺客相手の居合切りは勿論、定番の博打も。
辿り着いた赤子の父親というのが…。
世の畜生共へ、市が一喝する。
一作目以来となる三隅研次の演出は快調、伊福部昭の音楽も格調高く。
印象的だったのはラストシーン。
旅先で度々出会った仲良くなった盲集団と擦れ違うも、背を向ける。
もし、自分が盲でなかったら…? 流れ者でなかったら…? 赤ん坊を…。
市が初めて自分の境遇を否定した…というのは深読みし過ぎだろうか。
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