「子連れ市」座頭市血笑旅 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
子連れ市
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シリーズ8作目。1964年の作品。
全26作ある座頭市シリーズ。当り外れあるのは当然。
本作はシリーズの中でも出色。
数人組の刺客に狙われている市。間違いから自分の身代わりに赤子を抱いた若い母親が殺された。責任を感じた市は赤子を父親の元へ届けようとする…。
何と言ってもキーは、赤ん坊。
次第に情が沸き、自分が育てるとまで強く思う市。
ひょんな事から同行する事になった女スリも自分の人生を考え直す。
堅気じゃない世界で生きてきた者が赤ん坊への愛情によって感化されていく姿がなかなか感動させる。
座頭市の話と行ったら基本、ふらりとある宿場に流れ着き、その町を牛耳るヤクザ一味とその用心棒を倒し、またふらりと去って行くアウトロー物だが、本作のような人情話もいい。
刺客相手の居合切りは勿論、定番の博打も。
辿り着いた赤子の父親というのが…。
世の畜生共へ、市が一喝する。
一作目以来となる三隅研次の演出は快調、伊福部昭の音楽も格調高く。
印象的だったのはラストシーン。
旅先で度々出会った仲良くなった盲集団と擦れ違うも、背を向ける。
もし、自分が盲でなかったら…? 流れ者でなかったら…? 赤ん坊を…。
市が初めて自分の境遇を否定した…というのは深読みし過ぎだろうか。
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sow_miyaさんのコメント
2024年7月3日
如来講の盲者たちが、皆、明るく晴れ晴れとした姿で画面右へ歩みを進めるのに対して、市はきつい表情のまま、灰色の雲が流れる画面左へ1人で歩き出すという対比が象徴的でしたね。近大さんのおっしゃる通りだなと思いました。
左から右への動きは、未来とか希望を表し、逆に右から左は、過去へとか後悔とかを表すと聞いたことがあります。まさしくですね。