「田中絹代が落ちぶれていく。」西鶴一代女 よしたださんの映画レビュー(感想・評価)
田中絹代が落ちぶれていく。
田中絹代の身持ちの崩れていくさまが凄まじい。善良そのものの顔をした田中が、ちょっとした間違いやタイミングの悪さが原因でどんどん身持ちを崩していく。
同じ役を若尾文子あたりがやったら、落ちぶれたところからの這い上がり方が楽しみな作品になっていただろう。観客は「落ちるところまで落ちたところを観たい」と思ったことであろう。
しかし、田中が落ちぶれていくのでは、「もうこの辺でやめておいてあげてほしい」という思いを噛み殺しながら、観客は最後まで彼女の再起を見守ろうとするのではないだろうか。
そして、最後までその望みはかなえられることもなく、男の身勝手によって、悲しい流転を繰り返す女の一生を見ることになるのだ。
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