「五社英雄らしくない」御用金 hjktkujさんの映画レビュー(感想・評価)
五社英雄らしくない
この作品は、公開当時に鑑賞しましたが途中で眠くなったほどでほとんど印象に残っていませんでした。ところが、他の方々のレビューが高評価なので。今回、50年ぶりに再見しましたが、冗長さ、テンポの悪さ、無駄なカット、仲代達矢は何がしたいのかさっぱりわからないし、丹波哲郎の非情さの不徹底ぶり等々、本当にイライラさせられる作品でした。夏八木勲も仲代達矢を殺したいのであれば弓でも鉄砲でも使って殺せば済むものを、なぜ殺し屋を差し向けるのかさっぱりわかりません。そのくせ、手が悴んで刀が握れない、決闘の最中に手を息で温めるなどリアルに描いている、かと思えば、そんなに寒い中を軽装のまま去っていく仲代達也など、脚本家が馬鹿だからばかばかしくて話が盛り上がらないのです。30分カットして再編集すればもっとテンポのある作品になったでしょうに残念です。また、殺陣も期待したほどではなく、次に作った「人斬り」に比べると五社英雄らしさは全く見られません。それでも、これが外国には受けたようでリメイクまでされているのですがリメイク作品も五社英雄演出を忠実にコビーしておりばかばかしくて途中で見るのをやめてしまいました。Panavision本邦初使用とのことですが、カメラはストーリーテリングの道具であって、カメラに合わせた演出をするのは本末転倒でしょう。五社英雄はセルジオ・コルブッチのファンだったようで、ぬかるみの道は「続・荒野の用心棒」、雪景色は「殺しが静かにやってくる」の影響というよりはパクリであることは明らかです。だからこそ、外国受けしたのでしょう。もし、セルジオ・レオーネの影響を受けていれば、もっと違った演出となり、もっと面白い作品になったと思います。最後の、仲代達矢と丹波哲郎の戦いは、「切腹」の両人の斬りあいと比べたらそれこそ月とスッポンの差があります。佐藤勝の音楽がいいと思ったら、これもまた「殺しが静かにやってくる」のエンニオ・モリコーネに似ておりなんともはや・・・。五社英雄らしくないこのような駄作を作った当時の五社英雄の精神状態は、おそらく、想像ですが、尋常ではなかったのではないでしょうか。