劇場公開日 1938年1月7日

五人の斥候兵のレビュー・感想・評価

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3.5肩に懸れる一軍の安危はいかに重からん

2025年7月27日
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鑑賞方法:映画館

九死に一生を得て帰還した斥候兵が翌日直ちに死地へと赴く、という不条理がキモなのだろう。あの時代に戦意高揚という建前のもと、曳かれていくアヒルに兵の運命を仮託してその不条理を仄めかすような工夫には頭が下がる。だからこれを見て、戦争や軍隊を美化するのはけしからん!と騒ぐのは無神経の極みだし、安易に「反戦」(←括弧付きね)に結びつけるのはただ乗りを通り越して悪用と言うべきだろう。
そもそも戦争がもたらすのは死と破壊、残すものは悲嘆と怨嗟なのだからしない方が良いに決まっていて、真剣に戦争というモノを俎上に載せて無くす為に知恵を出し合うべきなのだが、「せんそーはんたい」と唱えながら行進するのはその正反対、「臭いものには蓋」の思考停止でしか無い。「〇〇反対」を唱えて本当にその〇〇が消えてなくなるなら、ぜひ交通事故や糖尿病にも反対して頂きたいものだ。

軍ヲタ的には38式歩兵銃の槓桿 の動きが欧米と逆だったり92式重機関銃の発射速度の遅さ等、楽しませてもらった。

それにしても、あんな長い伝言をよく暗記できるもんだなぁ…途中で話しかけられたら、うぎゃぁ!って言ってしまいそう。

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ひろちゃんのカレシ

2.5日本兵の特殊さ

2025年2月18日
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鑑賞方法:VOD

資料的価値で観るしかないような映画。

戦争なんて綺麗事ではないのに兵隊が斥候に出て戻る戻らないで心配する日本の兵隊は不思議だ。それなら初めから戦争などしないように考えるべきだと思う。

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四葩

3.5日本兵の日常と心情

2024年2月25日
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鑑賞方法:映画館

単純

興奮

 戦後の戦争映画は結構見ましたが、戦中の戦争映画というのは初めて見ました。戦中の映画ですから傍から見たような悲惨さや愚かさは描かれておらず、さりとて作中の人物がとり立てて英雄的な行動を見せるわけでもなく、5人が斥候に出るシーンにアクション的要素がある他は淡々と兵士の日常と心情が描かれています。描写の完成度は高いです。
 ただ気になるのは作中では村を占領したのに中国の民間人は一切出てこないということです。メインテーマである兵隊たちの日常を描くのに邪魔だから消したのかもしれませんが、やはりどうしても描けなかったのかもしれないとも思えました。
 あと兵隊たちの休憩中はともかく、作戦中の優秀さは戦後の映画ではなかなか見ることができない実際の精鋭部隊の様子を映す貴重な場面と思います。伝令の復唱などあれほど見事にできるものなのでしょうか。私などは間違ってビンタを喰らいそうです。

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FormosaMyu

4.0「戦場の現実は、戦場に出た者にしか分からない」

2022年4月22日
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so what

3.5前進と後退のクライマックスにある映画美と田坂監督のジレンマ

2020年4月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

戦意高揚の醜さと国威発揚の美しさを兼ねた、危うい時局の日本映画。この田坂作品には、”戦争と人間”についての感慨なしでは論じることが出来ない、とても深刻で抜き差しならない映画制作の状況が迫って来る。上官の命令通りに人殺しを遂行する兵士を、戦争のかっこよさとして描けば扇動的なメッセージしかなく、映画が単なる情報に堕ちていく。それを避けるためには、兵士一人ひとりの人間本来のまなざし、吐息、言葉を映像美に昇華させなければならない。それが作品の主軸になれば、戦争の愚かさを訴えかける普遍的な表現芸術になりえるのではないだろうか。この作品には、それがある。ある村落を占拠し駐屯した部隊の軍内部の描写が、人間の営みとして説得力を持っている。勿論ショットがひとりの兵士をクローズアップすれば、日本国の為に命を捧げる主張が語られるし、追い詰められたまなざしが戦争の残酷さを物語る。また部隊長が見せる戦いに挑む男の意地は、戦意高揚の何物でもない。登場人物を温かく見詰める田坂演出が、それを強調しているのも確かだろう。

五人の斥候兵の敵の情勢を調べる前進と後退の移動撮影のクライマックスが、そのまま戦争映画に挑んだ田坂監督のジレンマを具象化したような感慨を抱かせて、危険な映画と身構えていたにも関わらず、不覚にも感動を覚える。軍国主義に凝り固まった部隊長に飽きれ果て軽蔑しても、実直な日本兵士の犠牲的な姿を憂国の精神で描く演出の素晴らしさが勝った映画美は、素直に認めたい。

戦前の大作「土と兵隊」と、この「五人の斥候兵」は、戦争と日本人の歴史をもう一度客観的に見直す遺産として推奨するが、実は田坂監督では「爆音」「路傍の石」が好みであり、特に「路傍の石」は日本映画の傑作と評価している。

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Gustav