GONINのレビュー・感想・評価
全10件を表示
琥珀のグラスに浮かんで消える虹色の夢
石井隆監督作品は初見。
邦画の名作としてよく名前が挙げられてたのは知っていたけれど、何年もタイミングを逃していたのでこの機会に観てみた。
子供の頃はバイオレンス作品やヤクザなどの裏社会モノがあまり得意ではなかったけれど、構想元になった『レザボア・ドッグス』や北野武監督作品や韓国映画、『龍が如く』シリーズをプレイして素養を付けたのもあって途中で飽きることもなく楽しめたし、通常版で観たけれど個人的には別バージョンも観たくなるくらい良かった…。
バブル後に生まれた世代だからかも知れないけど、(公開時リアルタイムの時代設定なのが)今見るとバブル期から21世紀を迎えるまでファッションや文化、小物類が自分が写真や映像でしか見たことがなかった盛り場のものだったこともあって、この作品自体が絶妙に現実と虚構を曖昧にしてるように見えて好みだった。
個人的に基本痛い系の描写とかは苦手なんだけれど、バイオレンス描写が見れたのはそういう要因もあると思う。
(観たのが通常版なのもあるかもだけど)急な回想や事象、関係を匂わせる描写などが多くて、後で調べたら石井隆監督は漫画家でもあったと知って納得。
それを踏まえて本編を思い返すと、横顔や倒れた状態でカット割ってるシーンが今ならワンカットで撮影ももしかしたら出来たかも知れないと思ったし、もう石井監督が亡くなってるのがとても惜しまれる。
『龍が如く』シリーズをプレイしていると同シリーズにも登場してるビートたけしさんや鶴見辰吾さん、ヤクザ組織のアレコレやディスコ、バッティングセンターなど、もしかしたら他のヤクザをテーマにした作品に並んで『龍が如く』にも影響を与えたのでは?と思える元ネタのような描写があったのも良かった。
素晴らしい作品に出会うとその作品に使われている挿入歌もお気に入りになって一時期ブームになるんだけど、ちあきなおみさんの「紅い花」もその例に漏れずハマりそう。
各俳優陣も素晴らしい演技だったし2やサーガも楽しみだけど、この後どう続けるんだろう…?
バブル後
佐藤浩市、本木雅弘、根津甚八、竹中直人、椎名桔平の5人。中でも竹中直人はリストラされたサラリーマン。平穏そうだったが、家へ帰れば家族を殺していたことが判明。元刑事の根津のエピソードはちょと可哀そうだった。
佐藤浩市が死ぬシーンでは本木とキス・・・なんとなく少年愛?
やがて残された根津と本木が復讐のため大越組に乗り込むが根津は憤死。なんだ、本木のための映画だったかと思わせておいて、最後はビートたけしとの相撃ちで終わる・・・空しすぎる。ヤクザからの現金強奪なんて、結構爽快感を味わえるんじゃないかと思っていたのに、そんなものは全くない。奪った瞬間から死の恐怖がつきまとうものだ。
時代を象徴
する、描写が印象的。でもその時代の映画だから、当時は流行らなかったのかも。今の時代から見るからこその面白さがあると感じた。サーガを見てからこの作品を見たが、竹中直人はあれ即死でしょ?サーガの竹中直人とは違うよね?サーガとはまた違った視点から物語が描かれていて、誰の味方という考えを消すことができた。それにしてもビートたけしはすごい。期待を裏切らない演技。
暴力を上品に撮っている
サーガが出たので記念に。
撮り方が良いですね。
三屋が服を脱いでいくシーンが始まり、「たぶん監督はこのワンカットで本木を全裸にするんじゃないかな」と思って見ていると本当に最後の最後で全裸になる。
北野武監督の「あの夏、いちばん静かな海。」で、「たぶんゴミ収集車降りてサーフボード取りに戻ってくるんじゃないか」と思って観てたら本当に戻ってきた、あのシーンを思い出しました。
やっぱり、そういうもんなんですね。
ジミーが拷問を受けて、ナミィーが犯されるシーンを延々とロングショットで撮ってますが、とても良い撮り方だと思います。
あれ、平凡な監督だったら多分もっとカメラを寄せて、暴力的に、いやらしく撮っていると思うんです。
もしくは全てを省略してしまうでしょう。
あの距離感は、絶妙な撮り方だと思います。
荻原の家のシーンでも、荻原が殺した家族の顔を出来る限り見せないようにしているのが良いですね。
風呂場で死んでいる奥さんの顔も、ちらっと見えるだけでアップの顔は撮られていないですし。
荻原の妄想である、生前の顔はアップでしっかり撮られているので、これは極めて良い撮り方だと思います。
荻原を尊重していますね。
それに、どうやって殺したのか、なぜ殺したのかを下手に説明せずに、惨劇の痕だけを見せて、観ている側に想像させるのみなのも良いですね。
個人的に、事務所に金を盗みに押しかけるシーンの、机の上を走るショットは疾走感があって大好きです。
いやあ、傑作ですね。
テンポが良い
展開なドンドン進んで面白かった。
ヤクザに頭が上がらず、仲間を集めヤクザけらお金を強奪し、ヤクザから1人また1人と狙われて行く。ドキドキした。
竹中直人が家に帰って狂ってるところだけ間延びしてるように感じたけど、
後はスピード感があって良かった。
椎名桔平も良かったけど、モッくんのキャラが一番感情移入出来た。初めは何このキャラと思ったけど、万代が殺され、俺には無理だと逃げようとし、ギリギリのところで覚悟を決めて雨の中カッパを着て乗り込むところは格好良かったし、
北野武の掴み所のない殺し屋は殺しを飯を食うのと同じ感覚でやってるような不気味で怖かった。
男の友情や敬意を昇華するとゲイになると言うのも分かる気がするし、
そこが気持ち悪さよりと見やすさに繋がってる気もした。
面白かった
大昔レンタルビデオで見た時はそれほどとは思わなかったが、とても面白かった。事故を起こす前のたけしがターミネーターみたいにぬっと出て来て殺しまくる感じ、すごくよかった。バスが何も知らないのん気なおばさんを乗せて走っていく結末もすごくよかった。
BL描写がやたらとあった。
容赦ない
CSにて視聴。登場人物を1人1人、キャラ説明を含めて紹介。エンターテイメント性を予感させるも、話はただ容赦ない殺し合いへと展開していく。どうやって死ぬか、殺すかはこの手の映画では見所でもあるが、その期待を裏切らない残忍さで応えてくれる。竹中直人の場面はトラウマもの。しかしながら、クライマックスが5本続くと単調で冷めてきた所もある。本木雅弘は最初の狂気に満ちたキャラが持続しなかったのは残念。
殺して死んで。
もっくん、最初の5-6分くらい
誰この糞イケメンって気付かずにいたが、
妖艶な感じのシャワーのシーンとか
彼じゃなきゃできない!最高す!
この手のストーリーというか、設定は
個人的に、とりあえず胸熱になってしまうのだが、
間違いない!。
想像していたより淡々と5人が殺されていくんですが、
メタ的視点一切無し!バイオレンス!
1番の印象はジミーともっくん(役名忘れた)
敵地に女装して乗り込んだパンチドランカージミーはもうねすごいほんとー。
とことん、やるせない。
駄作怪作傑作を多く送り込んだ奥山時代の松竹作品群。その中で一番高名なのは「ソナチネ」だろうが、これは取り分け異彩を放つバイオレンス映画の一本。まさに「松竹バイオレンス」の裏ベストでも良いかもしれない。
この物語に出て来る5人の男たちは、バブル崩壊によって社会から溢れ(かけており)、経済的にもギリギリ(そうでもない人もいるこたぁいるが)。彼らは纏まった金を欲するが故、暴力団の事務所へ乱入、資金を強奪する事にすんなりと成功した。
さて此処までは只の暴力映画なんだが、この映画の見せ場はそこからだ。
彼等が1人、また1人消されていく。暴力団に雇われたヒットマンビートたけしによって。この過程が鋭く冷淡な視線を以て描かれている事で、「GONIN」は凡ヴァイオレンスから飛翔し、アイデンティティを獲得した。北野映画もそうだが、裏では恐ろしい位の熱量を帯びた北野映画の視線とはまた一味違う、荒涼で毒々しい視線によって、観客はこの報復の行方に息を呑むのだろう。
殆ど呆気なく殺される彼らの末路は悲劇的であったり、はたまた異常性を孕んでいたり…目前で恋人を犯され、恋人のドレスを着て事務所に殴り込む椎名桔平や、家族惨殺という事実に発狂し、妻の死体と風呂に浸かる竹中直人や…容赦ない描写は北野映画ともタイマンを張れる程だ。
あまりに大きい『落とし前』に狂気の殻に籠もる者もいれば、もちろん、命を落とした仲間や家族の仇討ちに不意の中から立つ者もいる。情味のある『紅い花』の流れる中、観客の望む道は僅かに拓かれ、クライマックスに突入して行く…。
この一作しか観ていない身が言うのは傲慢だが、石井隆監督は結構過小評価されていると思う。こういうエネルギーの入り方が一線を画しているというか何というか。
それでいて、こういうとことんとやるせない闘いをどんと描く所なんかに、魅力がある映画なんだ。
全10件を表示