「そのツッコミに愛をこめて」ゴジラ対メガロ しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
そのツッコミに愛をこめて
ゴジラ・シリーズ第13作。
DVDで鑑賞。
本当に恐ろしい映画です。いろんな意味で。ゴジラ・シリーズの中でも他に類を見ない怪作です。他の方々もレビューで書かれていますが、何しろツッコミどころが満載。
「チャンピオンまつり」時期の作品なので、子供向け映画へ完全にシフトしているとは言え、ここまでハチャメチャだと、逆に「子供なめてんのかよ」てなことになりそうです。
しかしそこにハマっている人もいらっしゃるみたいですし、カルト的な人気を博していることも事実。一概に駄作とは言えません。実を言うと、私はむしろ好きな方なのです(笑)。
初めて見たのは小学4年生の時でした。親にねだりDVDを買ってもらいました。その頃には、この年代のゴジラ映画はライブ・フィルムを多用していることを知っていたので、どのシーンがそうなのか、どれくらいの割合で挿入されているのか、と云う興味がありました。そうですオタクです(笑)。
「モスラ対ゴジラ」の群集避難シーンや、「地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン」でガイガンがセイバー戦闘機を鎌で撃墜するシーン、当時未鑑賞の「サンダ対ガイラ」からはメーサー殺獣光線車の攻撃シーンなど、殆どが流用であることに驚いた覚えがあります。そんなに予算無かったのかと悲しくなりました。
今思えば、この時はまだ子供でした。純粋に作品を楽しめていたからです。と云うか、何も考えて無かったのでしょう。
大人になって、ようやく頭にたくさんの「?」が浮かぶようになって来ました。以下、思ったことを徒然なるままに。
・シートピア海底王国について
元はレムリア大陸で高度な文明社会を築いていましたが、ある日大陸が地殻変動により沈没。彼らは海底都市を築き、独自の繁栄を享受していました。しかし地上人の行った複数回の地下核実験によって、海底都市がダメージを被ったことに怒り、報復を決断しました。平和な暮らしを脅かされたら、そりゃあ怒ります。今回は完全に我々が悪いかも。
地上攻撃のために海底人が寄越した刺客が、王国の守護神である昆虫怪獣メガロ。カブトムシを模したデザインは鋭角で攻撃的だし、結構カッコいい。でも、海底王国の守護神が昆虫とは。海の生き物とちゃうんかい。彼らも元々は地上人だから、神様が昆虫の姿をしていてもおかしく無いと云うことか?
メガロのピンチには、前作で子供たちの心を鷲掴みにしたガイガンが再登場し、救援に駆けつけました。早々の再登場に子供たちは喜んだことでありましょう。ですがここにもいくつかの疑問が。海底人のはずの彼らが、どうやってM宇宙ハンター星雲人と交流を持つに至ったのか。大陸が沈む前から懇意だったのか。ならば、かのゴキブリたちは何をしに地球に来ていたのか。その頃から地球侵略を狙ってたのか?
となると、そもそも海底人は地上侵略を虎視眈々と狙っていて、いい機会とばかりに攻撃を始めたのか。イースター島のモアイが通信アンテナだと云うことは、300万年前からのお付き合いなのか。容易くガイガンを寄越してくれたと云うことはそれなりに友好的な付き合いだったのか。考えても考えても釈然としませんし、興味が尽きません(笑)。
そして、地上工作員2人組がとてつもなくおマヌケ。どんな訓練したらあそこまでお粗末なヤツが出来上がるのか。とにかくダメダメ。無計画なのか、無鉄砲なのか、それとも単なるアホなのか。子供にやられてしまうし…
・ジェットジャガーについて
若き科学者・伊吹吾郎が開発した人型ロボットです。ペンダント状の操縦装置で動かすことが出来ます。シートピア海底王国人の攻撃活動の一環で、メガロの水先案内人として工作員に奪取されましたが、操縦装置のマスターを伊吹博士が所有していたので、意図も簡単に人類側にコントロールが戻り、怪獣島へゴジラを呼びに行く役割を担いました。
ゴジラが駆けつけるまでには時間が掛かります。その間もメガロは我が物顔で暴れ回っている。「自分がなんとかするしかない!」と急に自我に目覚めたジェットジャガーは、自らの意思で巨大化し、メガロに敢然と立ち向かっていきました。
おいおい、マジか!
伊吹博士の見解―「ゴジラが来るまで、自分がメガロと戦わなくちゃいけない。そんな想いがジェットジャガーをあんなに大きくしたんだろうな」。科学者なのに理論的な説明が出来ておらず、まさかの感情論で片づけてしまう始末。それにあっさり納得する周囲(笑)。「あんたホンマに科学者か!?あんたがつくったんやろ!」と思わずツッコみました(笑)。
書き出すとキリが無いのでこれくらいにしたいと思います。いろいろと考察する余地を残してくれていると云うことで良しとしようではありませんか。くれぐれも勘違いしないでいただきたいのは、本作を愛するが故のツッコミであること。好きじゃないとここまで言えない。子供の頃に好きな子をいじめたくなったでしょ。それと一緒です。
特撮面に関しては、ダム破壊シーンが白眉。オーディオ・コメンタリーで中野昭慶特技監督が仰っていましたが、少ない予算での一極集中の豪華さ。都市破壊が殆ど過去作の流用の中、このシーンの迫力は際立っており、怪獣映画の名場面に数えられる出来映えだなと思いました。
怪獣対決は、前作に続いてタッグマッチ。さながらプロレスで、擬人化の極地を迎えていたゴジラたちも、ここまで来ればもはや着ぐるみを着た人間でしかありませんでした。
完成品ではカットされましたが、ゴジラが当時放送されていた「木枯し紋次郎」の真似をして、木を楊枝のように口に咥えるシーンがあったそうな。カットされて良かったです(笑)。
[以降の鑑賞記録]
2021/04/23:Amazon Prime Video
※修正(2024/05/26)
『シン・ゴジラ』の後にこれを見ちゃうとさすがに恥ずかしくなっちゃいますよね(^^;
ちょっと擁護するとすれば…
当初この年ゴジラ映画の公開は無かったそうですが、春興行に空きが出来、急遽の公開が決定。
製作~公開まで、僅か1ヶ月(!)の急ピッチ作業。
さらに、この年の暮れに超大作『日本沈没』が控えていて、予算も労力も持っていかれ…
らしいです(^^;