「雲も霧も掴み所が無い」雲霧仁左衛門 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
雲も霧も掴み所が無い
五社英雄監督1978年の作品。
原作は池波正太郎。160分の長尺。超々豪華キャスト。
アクションも見応えもたっぷり。さぞかしボリューム満点の娯楽時代劇巨編と、ここ最近見ている五社セレクションの中でも楽しみにしていたんだけど…。
確かに娯楽巨編。
常連から新参。映画界に歌舞伎界。一発で覚えられないくらいの錚々たる面子。
彼らが織り成す愛憎劇。
アクションとエロスも織り交ぜ、これぞ大衆娯楽の極み。
良くも悪くも。
良く言えば上記の通り。
だけど何だか…。映画ならではの豪勢さやスケールではあるけど、贅沢なTV時代劇的でもあり、『魔界転生』『伊賀忍法帖』『里見八犬伝』といった往年の角川時代劇に通じるような匂いも…。
それに拍車をかけたのが、バイオレンスとエロス。
勢い凄まじい血飛沫や流血。その際の効果音がTV時代劇並み。時代劇に効果音を付けた先駆者の五社監督とは言え、ちと過剰気味。
エロスも濃厚な接吻、濡れ場、お○ぱいと、サービス精神旺盛なのか、エロ丸出しなのか…。
一応話は真面目に語られるのだが、もっとシリアスで重厚かと思ったら、ちょいちょいのチープさが見え隠れする。
話の方も何だかいまいち。
かつて武家社会に属していたが、無実の罪で追放され、盗賊となった男・雲霧仁左衛門。
その忠実な配下の者たち。
最後の大仕事を目論む…。
そんな彼らを追う火付盗賊改方の長官。
その一派の者たち。
彼らを取り巻く男たち、女たち…。
超々豪華キャストで魅せる交錯する人間模様は見物ではあるが…、
各々の派閥や思惑、目的などいまいち分かりにくい。
ドラマチックに語られてはいるが、今一つ伝わってこない。
何だか160分、超々豪華キャストの顔触れと大衆好みのものを、特にワクワクせず延々と見ていただけのような…。
自分には雲や霧を掴むような、掴み所の無い作品だった。