「ラストシーンのパーティー会場での銃声 あれは誰が、誰を撃ったのでしょうか?」華麗なる一族 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
ラストシーンのパーティー会場での銃声 あれは誰が、誰を撃ったのでしょうか?
物語の面白さ、巧みさは原作山崎豊子の原作によるものです
本作はその小説の世界の正に映像化そのものに意味があったと思います
恐ろしくリアルで如何に徹底的に取材して撮影したのかが伺えます
昨今ある事件から、上級国民という言葉が流行しています
本作はその上級国民の世界を垣間見せてくれるのです
上級国民からは程遠い自分でも仕事などでその一端をちらりと覗いてきたこともあります
その限られた経験ですが、余りにもリアルです
リアル過ぎるほどです
議員会館の部屋の内部、上級国民の屋敷の暮らし、取締役会、ホテルでの大パーティーの有り様は特にのけぞるほどリアルでした
ラストシーンのパーティー会場での銃声
あれは誰が、誰を撃ったのでしょうか?
あの銃声こそ、山本薩夫監督の本作における主張だったのだと思います
あの銃声こそが、映画としての本作のテーマなのです
あの銃声は、私達一般国民の観客が、あのパーティー会場に集まった上級国民に向けて撃った銃声だったのです
山本薩夫監督的に、あるいは社会主義思想的に表現するならば、
人民を搾取して虐げ、一般国民の苦しみなぞには少しの関心も持たない資本家と保守政治家たち
この互いに癒着して腐敗している呆れはてた連中に、怒れる私達一般国民の観客が、心の中で彼らに銃口を向けて、彼らを断罪する銃弾を撃ったのだ
連鎖倒産する中小企業の人々、解雇されたり給与引き下げされた人々、あの工場で赤旗を振ってシュプレヒコールを繰り返した労働者たち
その彼らの銃弾なのだ
こういうことなのだと思います
つまり観客に社会主義革命をなせ!との監督の扇動なのです
35年振りに東宝に戻って撮影した作品の最後の最後にたった一発の銃声を入れることで、監督は自分の撮りたい映画にしてみせたのです