「災いと希望」ガメラ 大怪獣空中決戦 sankouさんの映画レビュー(感想・評価)
災いと希望
夢中になって観ていた子供の時分でも、東宝のゴジラに比べて大映のガメラはかなり子供向けで、怪獣のフォルムもネーミングも稚拙な印象が強かった。
尤も火を吹き、回転しながら飛び立つガメラだけはとても格好良くもあり、愛らしくもあった。
そして平成の時代に甦ったこのシリーズ一作目。
改めてこの映画が東宝の制作であることが感慨深い。
劇場公開された時はまだ小学生だったが、昭和シリーズよりも遥かに洗練された作品であることは当時も感じていた。
プルトニウムを積んだ輸送船が謎の漂流する岩礁と接触する。
さらに長崎の小島では島民と新種の鳥の調査に向かった研究チームが消息を絶つ。
この二つの謎をそれぞれに海上保安庁の航海士光森と鳥類学者の長峰が追う。
特にギャオスが姿を現すまでの流れが恐怖心を煽り、まるで『ジュラシックパーク』のようだと初めて観た時に感じたことを覚えている。
体長は15メートルほどだが、島民を襲うギャオスのフォルムが歪で不気味だ。
反対する長峰の声を無視して政府は三体のギャオスを捕獲し、保護する方針を示す。
ギャオスは捕獲のために福岡ドームに誘導されるが、時を同じくして海上からガメラが出現する。
ガメラがギャオスを追って現れたことは明らかだ。
三体のうち一体はガメラに叩き潰されるが、残りの二体は夜空へと飛び去っていく。
そしてガメラもまた円盤状のフォルムになり、ギャオスを追跡するために飛び立つ。
ガメラの出現により福岡の街は破壊されてしまった。
政府はギャオスを保護するという方針を変えずに、ガメラこそ人類の脅威であると捉え、その駆除に乗り出す。
しかしその後、ガメラはギャオスから逃れる光森と長峰を身を呈して庇おうとした。
そして岩礁から発見された石板には「最後の希望・ガメラ、時の揺りかごに託す。災いの影・ギャオスと共に目覚めん」と記されていた。
光森はガメラは人類の味方であると確信するが、政府は碑文の内容を真に受けず、自衛隊に攻撃を受けたガメラは海底で傷を癒すために眠りにつく。
そして信じられない速度で成長するギャオスは人を襲い続け、都心に姿を現す。
エンターテイメントとして楽しめる作品だが、政治に対する風刺や環境破壊に対する強いメッセージを持った作品でもある。
古代人は行き過ぎたテクノロジーによりギャオスを生み出し、滅亡することになった。
そしてこのままでは人類は同じ過ちを繰り返すことになる。
政府がギャオスに対して完全に打つ手が失くなった時に、満を持してガメラが現れる。
最後の決闘場面は目まぐるしい展開で、今観ても十分に見応えがある。
怪獣映画はCGだけでは出せない味もあるのだと改めて感じた。
細かい部分までリアリティーが追求されており、また怪獣が人を襲うという恐怖が生々しく感じられる作品だ。
福岡にガメラとギャオスが出現したというニュースを見て、東京にも来ないかなと浮かれていたカップルが後に東京に飛来したギャオスの犠牲になってしまうのはとても辛辣だ。
ところどころミスキャストはあるものの、シナリオの面白さは怪獣映画の中でもピカイチで、やはりガメラのフォルムは愛嬌があって好ましい