「倒産間近い大映でありながら、前作よりも遥かに面白く出来ており、監督始め製作陣のガッツを感じます」ガメラ対大魔獣ジャイガー あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
倒産間近い大映でありながら、前作よりも遥かに面白く出来ており、監督始め製作陣のガッツを感じます
1970年3月公開
大阪万博開幕とほぼ同時の公開
よってバルゴン以来の大阪が舞台になり、開幕直前の最後の仕上げの工事中の大阪万博会場も登場します
万博会場自体は流石に破壊しないが、久し振りに都市破壊シーンを大胆に繰り広げてくれます
もっとも特定の場所を忠実にミニチュアセットにしたものではなく、それらしくしただけのもの
大阪城天守閣はチラリと映るのみ
通天閣だけは破壊してくれるが、あっさりとしたものでしかないのですが
それでも倒産間近い大映でありながら、前作よりも遥かに面白く出来ており、監督始め製作陣のガッツを感じます
見所は二つ
一つ目はガメラの体内シーン
これは司令部の大投影スクリーンにガメラのレントゲン写真を投影して潜水艇の位置を光点で示すところはミクロの決死圏の影響だというのは特撮ファンなら直ぐ気がつくところ
二つ目はガメラへの高圧電気放電作戦
変電所での電力投入シーンはエヴァンゲリオンのヤシマ作戦の原形を思わせます
またあらためて観て気がついたのは、現代の目で観るとそれはまるでガメラの充電シーンであった事です
電力が流れてガメラに生気が戻るにつれ、透明になっていた顔面や左手がみるみる胴体に近い部分から元の色に復元していくのです
まるでスマホの充電マークが急速充電で復活していくようです
東宝特撮は1968年8月の怪獣総進撃で一旦フイナーレをとげ、1969年12月にゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃というエピローグをもって怪獣映画の製作は停止を決めていたのです
そんな中ガメラは例年通り春休みに本作を公開したのです
それもこんなにも力を入れて
それはきっと東宝に刺激となって、ゴジラの新作、ゴジラ対ヘドラの製作につながっていったと思います
その意味で本作は怪獣映画の火をつないだ意義のある作品であるのです
少なくとも、1970年にあったウルトラQ 、ウルトラマン、ウルトラセブンの再放送やウルトラファイトという超低予算ミニ番組までが好評を得て、帰ってきたウルトラマンにつながった、その種火にはなったはずです
ウルトラセブンは1968年9月に終了して、後番組は怪奇大作戦という東宝特撮の系譜なら怪人路線に進んでしまい、もう怪獣が登場するテレビ番組は1本も無くなっていたのですから
しかし、イギリスでは謎の円盤UFO が製作されていたのです
それは日本でも同年10月から放映されるのです
彼我の特撮の差はもはやとんでもない差になっていたのです