「ラストシーンでの倍賞千恵子の笑顔が希望を感じさせるものの、この「家族」よりは「故郷」の方が…」家族 KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)
ラストシーンでの倍賞千恵子の笑顔が希望を感じさせるものの、この「家族」よりは「故郷」の方が…
当作品の家族の出身地の伊王島の近くで、
同じ炭坑の島である軍艦島の調査に
参加させて頂いた身としての興味と
同じシリーズで大好きな山田作品「故郷」
との絡みで再鑑賞した。
それにしても、現代だったら
飛行機で簡単に移動するであろう
長崎から北海道への移動を、
赤子を失ってまでの家族の長い鉄道旅の
過酷さを追体験すると共に、
改めて、この映画のスタッフ・キャストの
撮影の労苦も、並大抵のものでは
なかったろうとの想像が頭を駆け巡った。
ただ、この作品で気になるのは、
各地のロケで、撮影シーンを気にしている
通りすがりの周りの人々の映り込みだ。
出来れば一回勝負ではなく、
何度かのトライで、
より自然なフィルムを選んで欲しかった。
同じような撮影での
ゴダールの「勝手にしやがれ」や
カサヴェテスの「アメリカの影」での
同じような街中撮影では、
そんなことが気になるの映像は無かった
と思うので。
さて、この移動で、家族は大切な二つの命を
失うことになったが、
“民子”に新しい家族が宿ったとのことと共に、
彼女役の倍賞千恵子のラストシーンでの笑顔
が家族の希望を感じさせ、
他人事ながら全ての労苦が洗い流された
ような気持ちにさせるエンディングだった。
しかし、私としては、山田洋次監督の
「家族」「故郷」二部作の中では、
高度成長期における一家族の労苦に迫った
「家族」よりも、
その高度成長の結果、
“失われていく故郷意識”が心に響く
「故郷」の方が好きではある。
コメントする