風たちの午後のレビュー・感想・評価
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理解を超える狂おしさ
狂おしい想いへの共感はある方だと思うが、血文字を書くところはさすがに限界で、これまで見たどんな映画よりも狂気を感じた。秘めた想いが不意に生々しく現前して面食らったのかもしれない。
キンゼイレポート
元々異性愛を自覚して対象を異性に求めること、そして無自覚のまま愛する対象者が同性だったこと。それを隔てる要因は、理性か本能か、はたまた縛りか解放か。何れにせよ愛は盲目であり、愛は打算である。
本作は監督が学生時代の制作ということで、確かにいわゆる学生映画の作りである。ただ、監督なりに色々な拘りや仕掛け、メタファー、ダブルミーニング等々、散りばめられていて多分その時代に於いては一目置かれるレベルだったのだろうと思う。頭でっかちな部分が見え隠れするのも、生意気なコマッシャクレ感が漂っていて中々乙である。
勿論、全体的には荒々しく、大雑把な作りは否めない。独り善がりさも鼻につく部分も多い。しかしその全てが正に『若さ』という言葉で括れることは美しいと思う。主人公の無軌道さ、狡賢さに行き着かない中途半端さ、そして純な恋愛を信じる強さを稚拙ながら描き、紡ぐ正直さを作品を通じて余すところ無く表現している。完成度が低いということは今作品に於いては余り意味をも持たない。ラストを結局主人公の死及び、その対称にある生まれる筈であった赤ちゃんの泣声とのオーバーラップに収める着地の疑問点も重要なところではない。抗って藻掻いたという痕跡が作品に爪痕を残してることをキチンと観客に印象付けているかということが重要であり、紛れもなくその行為が映画制作というものであろう。
その切なさ、その報われ無さは、古今東西、時代が変わっても普遍であり、その理不尽、不条理を何処まで伝えることができるか、映像作家としての永遠のテーマであることに紛うことがない。
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