劇場公開日 1966年1月25日

「あくまで女性を描く事が目的です」女の中にいる他人 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0あくまで女性を描く事が目的です

2022年12月3日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

ミステリー?
犯人が中盤で殺人を自白するなんてミステリーじゃありません

成瀬巳喜男監督は一環して女性を描く監督です
本作もそうです
あくまで女性を描くことが目的です
題名からして、原作の海外小説の「細い線」をそのまま採用していません
細い線なんてことには、成瀬監督には興味がないのです
あるのは、題名どおり女の中には他人がいるということです

犯人の自白への驚愕があり、その次にでる女の言葉は私はどうなるの?
子供達はどうなるの?
女の本音はこれなのです

犯人の苦悩になどなんの興味もないのです
中の良い夫婦に見えても、妻は他人であるのです

妻だけじゃありません
登場するすべての女性が自分が最優先なのです
他人を思いやるなんてことはないのです
子供と義理の母くらいでしょう
男に対して思いやるなんてことは表面的なことだけなのです

新珠三千代はその監督の意図を汲んで見事な演技で応えています

犯人からの殺人の告白を受けたとき、自首するとの決意を聞かされた時の表情の動きは素晴らしいものでした

ラストシーンの海辺でのパラソルをさした後ろ姿

クロード・モネの「日傘をさす女」の裏返しの構図のように感じました

モネは妻と幼い息子へ無限の愛を寄せて印象派の名画を描きました
本作のラストシーンはその裏返しです

日傘をさす女も後ろ姿からみれば、彼女は一体何を心の内で考えていたものか知れたものではない
そう言うことだと思いました

あき240