男はつらいよ 寅次郎の休日のレビュー・感想・評価
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【”人間の幸せとは。そして、人間は分かりにくい生き物。”寅さんシリーズの再後半は吉岡秀隆さん扮する甥・満男と恋の相手・泉を演じた後藤久美子さんが支えた事が良く分かる作品。】
■漸く大学に入ったものの目的を見出せない日々を送っていた満男は、母と別れた父(寺尾聡)が一緒になった女性(宮崎美子)に会いに九州・日田市へ行くという泉と一緒に新幹線に乗ってしまう。
二人を心配し追う寅次郎は、泉の母・礼子(夏木マリ)と寝台車に乗り込み、二人を探す旅に出る。
◆感想
・渥美清さんは、今作頃になると体調が悪くなりスタッフも気を使い大変だったという記事を読んだ事があるが、今作での渥美さんはその様な風情は一切見せない。
プロフェッショナルとは、渥美さんの様な方を言うのだろう。
・今作は、寅さんシリーズの再後半を支えた名子役だった吉岡秀隆さんが立派に成長し、後藤久美子さん扮する泉への想いを抱える姿や、泉も満男や寅さんやとらやの人達を心の支えにしている姿を描いている。
二人をキャスティングしたからこそ、寅さんシリーズは世界でも類を見ない長大なシリーズになったのだと、改めて思う。
・漸く大学に入った満男が、親から離れたいという気持ちは、自身の経験から言っても良く分かるし、それを吉岡秀隆さんが流石の演技で見せている。
親のことが嫌いなわけではないし、逆に感謝していてもそのように思う時期ってあると思うな。
<今作では、泉の父が出奔した理由がはっきりとは描かれていないが、何となくは類推出来る。だが、何だかモヤモヤする。
男だったら愛した相手と結婚して、子をなしたのなら離婚をしてはいけないと思う私は、考えが古いのかなあ・・。周囲を悲しませるだけだと、思うのだが・・。>
さくらがお酒を
シンデレラエキスプレスと黄色い12本のバラ
1990年12月公開
1990年の秋葉原が泉ちゃんの父の勤めているところとして登場します
この年の4月、一世を風靡したラオックスのザ・コンピュータ館がオープンしています
電気店街が、コンピューターの街に変わって空前の活況を示していた頃です
よく通ったものでした
ゲームやアニメのオタクの街になるのは、まだずっと先のことです
これもバブルの絶頂期だという説明だと思います
寅さんなんていつだって休日じゃないか
なんで「寅次郎の休日」なんだよ、と思ってしまいます
まあ確かに、一目惚れしてしまった泉の母礼子と二人でブルートレインで九州まで行きます
日田の派手な祇園祭りをみて、近くの天ヶ瀬温泉の旅館に泊まって、礼子からあなた♪とか呼ばれて、仲居さんから家族旅行だと思われたので話を合わせてしまってます
だからローマの休日をもじって日田の休日、転じて寅次郎の休日なのでしょう
日田は、第41作「寅次郎心の旅路」で寅さんがウィーンを聞き間違えていた湯布院からさらに鉄道で1時間ほど山に入ったところです
湯布院に昔博多から久留米市周りで、日田を通って行ったことがありますが、本当に遠いところです
冒頭の夢
前作の小野小町と深草の少将のくだりからの連想なのかさくら式部が武蔵の国は葛飾郡柴又の出だといいます
数年前の正倉院展で展示されていた古代の戸籍を思いだしました
活字のように小さな明瞭な美しい楷書で書かれていて、養老5(721)年の「下総国葛飾郡大嶋郷戸籍」に「孔王部刀良」と「孔王部佐久良賣」と横に掲示されている解説を参考にすれば、素人でも読めるものでした
さくら式部の姫姿の倍賞千恵子は仲間由紀恵にとても似ていてびっくりです
本作では泉ちゃんの方が、突然満男に会いにきます
スマホもガラケーも、ポケベルすらまだない時代ですが、手紙しとくとか電話しておくとかあったとはずです
彼女の、急に父に会いたくなったというのは口実です
本当は満男に突然会いたくなったのです
前作の満男のように、今度は自分が満男を驚かせたかったのです
それが父が会社を辞めて九州に引っ越していたことから、本当に父に会いに行く旅に変わっていったのです
「若い時っていうのはな、胸の中に炎が燃えている。そこに恋という一文字を放り込むんだ。パーッと燃え上がるぞう。水を掛けたって消えやしない」
ここからはじまる寅さんのアリアにその場の一同が目を輝かせて聞きほれるのは名シーンです
シンデレラエキスプレス
1985年のユーミンの歌、1987年JR東海のコマーシャルソング
東京駅、日曜日の21時ちょうど発、新大阪行き最終ひかり号
ホーム、車両のドアの前で別れを惜しむ男女の姿を歌った曲です
でも、その曲がでるずっと以前からそんな光景は有りました
まるで自分達の事を歌った曲だと思ったものです
劇中の満男と泉の二人の姿は正にそれです
最終の新大阪行きではなく、日中の博多行きですが、その姿はシンデレラエキスプレスの恋人達の姿です
ドアが閉まる瞬間飛び乗って、デッキで向かいあって見つめ合う二人の姿は、そのまま古い古い記憶を蘇らせるものでした
長距離恋愛を象徴しているものです
多くの人が同じ経験をしているはずです
当時はのぞみ号はまだありません、ひかり号が一番早い列車です
新幹線の品川駅はまだなく、新横浜駅に停まるひかりは1日に何本も無かったと記憶しています
満男が飛び乗ってしまうと名古屋までノンストップである確率は高いです
東京駅をでて、有楽町、まだ広大な空き地の汐留、浜松町の浜側の光景、今の品川駅の手前の空き地
それは座席からみえる角度ではなく、デッキで立っている二人から見える角度での光景なのです
脳裏でプレイバックされるものと同一の映像で、フラッシュバックして胸が震えてしまいました
寅さんの見てきたような講釈の「東京駅、ベルが鳴る…」のとおり、あのタカタカタカと甲高い発車ブザーは、別れたくないと感情を高ぶらせて、ためらう背中を押す力があるのです
そんな深く心に刻みつけられる経験をしたからこそ泉ちゃんは、日田での父を幸せそうだと思えるように変わっていたのです
もはや別れてくれと相手の女性に言うことはできなくなっていたのです
満男の行動が、彼女の心を変えたのです
寅さんが礼子のラウンジに残していった黄色いバラの花束
花言葉は「愛の告白」、12本に見えたそのバラの数の意味はプロポーズです
12本のバラには、それぞれ「感謝、誠実、幸福、信頼、希望、愛情、情熱、真実、尊敬、栄光、努力、永遠」の意味が込められており、この全てを貴女に誓うという「ダズンローズ」というものだそうです
お正月、泉ちゃんがまたも突然満男の家にきています
2年連続です
満男を驚かせて喜ぶ顔が見たかったに違いありません
ラストシーンは、いつも通り初詣の客相手に商売する寅さんです
ロケ地を調べてみると、日田の亀都起神社だそうです
日田での良い思い出を、反芻したくて正月の商売を日田に思い定めて来たに違いありません
これこそ「寅次郎の休日」だったのです
しかしコロナ禍は残酷です
遠距離恋愛のカップルも、会いに行くこともできません
寅さんが商売の旅にもでれないのです
後妻(宮崎美子)と幸せそうにしている父親(寺尾聰) を見た後藤久美子は父親には何も言えなかった。 寅さんは後藤久美子の母親(夏木マリ)に惚れてしまう。 後藤久美子と寺尾聰の別離の瞬間は泣ける。
寝台車での夏木マリの指の動きは「絹の靴下」を彷彿・・・間違いはあのとき生まれた~♪
平安時代には柴又なんてなかったと思うが、久しぶりの夢落ちスタートに満足。今回は泉(後藤久美子)が母娘を捨てて家を出た父親(寺尾聡)を説得しに行こうと旅をする物語。一旦は寅さんの説得によって母親(夏木マリ)の元へと帰ろうとするのだが、新幹線のホームに見送りにきた満男がその切符を見て思わず列車に飛び乗ってしまった。もう満男の寅さん化の始まりだ!
運悪く、夏木マリもくるまやへとやってきて、挨拶するところだったが、若い二人を追うために寅さんと一緒に大分日田まで旅をすることになった。周りは夏木マリの色っぽさのため寅さんを心配するのだが・・・やはり寝台車であることも危なげな雰囲気。前作ではゲイのライダー役だった笹野高史が父親の元部下役。思わず笑ってしまいます。
日田での祭りは男気のある山車を中心にした勇壮な練り歩き。そんな地方の町にひっそりと薬局経営をする宮崎美子が父親の愛人だったのだ。二人の幸せそうな雰囲気を見ていたら「帰ってきて」と言えなくなってしまう泉。大人の世界を理解し始める姿もいい。まだ高校三年生だよなぁ。
寅さんと泉のママ礼子も遅れて到着するが、すぐに若い二人と再会。連れ戻すことを諦めた様子に納得し、4人で温泉旅館に泊まることになった。ヒスパニックの女中さんは前作にも出てましたよね!
そんなこんなで、寅さんが恋することはなかった物語(若干、夫婦を演じていたが)。別れ際に満男に言う「困ったことがあったなら、風に向かって俺の名前を呼べ。おじさんはどこにいようと飛んできてやる」というのが名台詞となった。
冒頭の寸劇、これぞ、男はつらいよ、のつくり。ゴクミの存在感、流石に...
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