「二十三半の瞳」男はつらいよ 柴又より愛をこめて 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
二十三半の瞳
シリーズ36作目。
OPの夢は、
日本人初の宇宙飛行士に決まった車寅次郎。が、直前になって「乗り物酔いする」「行きたくない」と駄々をこねる始末。いよいよ搭乗し、出発となるが…!?
夢から覚めた寅さんが居る田舎駅やOPタイトルは、我が福島の会津地方である。
あけみが家出した!
タコ社長はTVの尋ね人コーナーに出演して、泣いて呼び掛け、柴又の恥を晒す。
するとあけみから電話が掛かってきて、伊豆の下田に居るとだけ告げ、さらに寅さんに会いたいと漏らす。
そういう時に帰ってくるのが、この男!
事情を聞いた寅さんは、早速下田にあけみを探しに行く。
寅さんに会いたいあけみ。
その気持ちが分かる満男。
何だかんだ言って、慕われ好かれる男なのである。
下田の渡世人仲間のツテを使って、難なくあけみを見つけ出した寅さん。
柴又に連れて帰ろうとするが、帰りたくないと言うあけみ。
そんなあけみの気が晴れるまで、旅に付き合う寅さん。
水平線上に見える小さな島に船で渡る事に。
伊豆諸島の式根島。
とにかくこの島の風景や雰囲気が、堪らなくいい!
海と自然に囲まれた小さな島だけど、行ってみたいと心底思わせてくれる。
毎回日本各地が舞台になるが、ベスト・オブ・旅の舞台は?…と問われたら、『知床慕情』と並んで真っ先に思い浮かぶほどである。
船の中で、島で同窓会を行う島の卒業生一行と知り合った寅さん。
島では先生が待っている。
モチーフは言うまでもなく、名作『二十四の瞳』。
出迎える美人の真知子先生。演じる今回のマドンナは、栗原小巻。
いつもながら一目惚れ。
あけみの旅に付き合うと言ったのに、真知子先生と卒業生たちの同窓会にお邪魔して、あけみをほったらかし。やれやれと言うか、寅さんらしいと言うか…。
一方のあけみは、旅館の青年と知り合う。
島の案内して貰ったりすっかり島が気に入った矢先、突然青年から告白されるが…。
やがて柴又に帰ってきた寅さんとあけみ。
腑抜け状態の寅さん。理由は言うまでもない。
そんな時、真知子先生がとらやを訪ねて来て…。
この後の展開や寅さんの失恋もお察しの通り。
真知子先生には東京に親しい知人が居る。今は亡き親友の夫とその娘。
娘は真知子先生を母のように慕っている。
夫は冴えない不器用な中年男で、真知子を前にするとしどろもどろ。つまり、そういう事。
彼からプロポーズ含んだ告白を受けた真知子先生は…。
自分を大事にしてくれる相手と、安定した幸せなこれから。
が、受け入れたら、一人の女としての激しい感情とは無縁になる。
その狭間で思い悩む真知子。
そんな真知子に寅さんが掛けた言葉。またしても自分の幸せより相手の幸せを願う。
真知子の相手役に、東映ヤクザ映画のヤラレ役/悪役専門の“ピラニア軍団”として知られる川谷拓三。冴えない不器用な中年男役が何の違和感なくハマってる。
また、下田の渡世人仲間に、笹野高史が初登場。シリーズの、そして山田作品に欠かせない名物脇役に。
寅さんとあけみのやり取りも楽しい。
旅先の雰囲気が最高。
話もこれぞ寅さん!
久々の出色。
個人的にお気に入りの一本。
相談を受けた寅さんの物分かりの良さ。
そんなに詳しく聞いてないのに、
むちゃくちゃ早い答えでした!(笑)
「(拓ちゃんは)いい男に決まってる」
これも数々の恋愛相談を受けてきたおかげなのでしょうかね~