男はつらいよ 寅次郎春の夢のレビュー・感想・評価
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Impossible movies!
50年前はアメリカ人と言えば、レディファーストと思われていた。レディファーストが素晴らしいと思われていたようだ。
【”カミカゼとハラキリではなく、国を越えて人に優しく粋な人達が住むとらやにアメリカ人がやって来た。”今作は寅さん流、優れたる日米文化比較論をベースに構築された面白くて、心に沁みる逸品である。】
■今作は、資料を見ると脚本にレナード・シュレイダーが参加している。成程。日米文化比較論を基調に、国を越えての友情や日本人の根本的気質である困った人を見たら親切にする文化が見事に盛り込まれた作品である。
ー ビタミン剤のセールスマンとしてやって来たアメリカ人マイケル・ジョーダン(名前が凄い。バスケのマイケル・ジョーダンが脚光を浴びたのは今作の後だから、偶々なのか、良くある名前なのか・・。演じたのは長身で日本語が喋れてチャーミングな男、ハーブ・エデルマン)は薬が売れなくてお金が無くてホテルに泊まれないが、窮状を見た御前様(笠智衆)がとらやの人達に”寅さんの部屋を貸してやれないか”と言い、気の良いとらやの人達は困惑しつつも、優しくマイケルを迎え入れる。
そして、とらやの人達は彼をマイコと呼んで仲良くなるのである。
心優しき良き人達である。ー
◆感想 <Caution!内容に触れています。そして今作の特に好きな所を記す。>
・寅さんが、二階の自分の部屋にマイコが居ると知り、更にさくらにアメリカ人なりの接し方をする姿が気に入らずに激怒するが、満男の英語教室の先生めぐみ(林寛子)に事情を説明され、とらやを出て行こうとするマイコを呼び止め握手するシーン。その後、二人は一緒に飲みに行き、更に親密になるのである。
この一連のシーンは寅さんの人間力や器の大きさを示すとともに、彼の人間的な優しさは国境を越えている事を示すシーンだと思う。
・序でに言えば、マイコの商売や身なりが最後まで寅さんに似ている設定も絶妙に可笑しい。
・マイコが、優しいさくらが布団を一生懸命に敷いてくれる姿や、控えめな物腰を見て、彼女に徐々に惹かれて行く姿も、何処か寅さんに似ている。
・だが、寅さんと決定的に違うのは、マイコはさくらにストレートに”I Love You"と言ってしまう所である。
当然、さくらは”Impossible. This is Impossible”と言い、その後寅さんにそのことを言うが、寅さんは懸想していためぐみの母(香川京子)に良い人が居ると知った後だった事も在り、マイコの想いを察し”勘弁してやってくれ。”とマイコを庇うのである。
このシーンも、寅さんの絶対的な人間肯定的な性格を示していると思うのである。
<今作は、寅さんシリーズの中でも異色の一品かもしれない。
だが、マイコを演じたハーブ・エデルマンの名演や(アメリカ人で、あの役をこなすのは相当に難しかったと思うからである。)寅さんの絶対的な人間肯定的な優しき性格が、国境に関係なく発揮される数々のシーンが、私はとても好きなのである。
ルース・ベネディクトの「菊と刀」を読むより、今作を観たほうが余程、日米文化比較が出来るのではないかな、と思った作品でもある。>
日米親善は寅さんにかかっている!?
"男はつらいよ" シリーズ第24作。
Huluで鑑賞。
寅さんが異文化交流(?)に奮闘する姿が微笑ましい限りでした。大のアメリカ嫌いな寅さんでしたが、マイケルと喧嘩の末に分かり合い、国境を越えた交流が始まりました。
そのマイケル、まるでアメリカ版寅さんみたいな人物。格好や職業、本当に寅さんそのもの。惚れ易いところもそっくりでした。その相手がさくらなのが厄介でしたが…(笑)。
マドンナは香川京子演じる圭子。娘が満男の通っている英語塾の先生だったことから出会い、またもや一目惚れ。
結末は、もはや言わずもがなですが、寅さんが自ら身を引くその姿は、いつだって哀愁が漂っているなと思いました。
[余談]
脚本などにレナード・シュレイダーが参加していることに驚きました。「太陽を盗んだ男」だけじゃ無かったのか…
※修正(2024/06/09)
アメリカの男もつらいよ
シリーズ24作目。
やっとこさ半分!
OPの夢は、サンフランシスコのチャイナタウン。流れ者の寅次郎が逃げた着いた先の酒場で生き別れた妹と再会するも、ギャングに追われ…。
序盤の騒動は、“ブドウ騒動”(かの“メロン騒動”ほどではないが、こちらもなかなかケッサク)と、満男が英語塾に通ってる事から起きる“英語騒動”。
さて今回、何故ちとアメリカ色かと言うと…
とらやには毎回色んな人がやって来るが、今回は意外過ぎる人物。
アメリカ人のマイケル。
アメリカから来たセールスマン。が、商売の方は全く売れず(彼が売っているのは、今で言うサプリメント)、日本語もほとんど解らず、泊まれる所も見付からず、疲れ困り果てていた。
この当時の日本は今ほど国際交流に程遠く。
英語で話し掛けられたり、外国人と対するだけで、怪訝・敬遠。
当時の日本の外国に対する距離や考えを風刺的に表している。
訳アリのマドンナならまだしも、外国人…。
さすがのとらやも最初は困惑するが…
しかし、ひと度知り合えば、日本人だろうと外国人だろうと人と人同士。
身体はデカいが、心は優しいマイケル。
とらやもすっかり彼の事を気に入る。
最初は日本にウンザリしていたマイケルだったが、遠い異国で親切な人たちに出会えて、感謝感激。まるで、家に帰ってきたよう。
とらやの2階で暮らす事になり、平和的な国際交流。
幸せだった。あの男が帰って来るまでは…。
マイケルを演じるは、映画やドラマでコメディを中心に活躍していたアメリカの俳優、ハーブ・エデルマン。
『ザ・ヤクザ』にも出演するなど日本とは少なからず縁アリで、ユーモラスで哀愁滲ませる好演。
脚本にもアメリカ人が。レナード・シュレーダーは『タクシー・ドライバー』の脚本家で知られるポール・シュレーダーの兄で、『ザ・ヤクザ』の脚本も担当、『蜘蛛女のキス』ではアカデミー脚色賞にノミネートもされている。
さてさて、寅さんはアメリカの事をどう思っている…?
大っ嫌い!
一方的な偏見で、今なら問題発言・人種差別レベル。
もし、二人が顔を合わせたら…。
遂にその時が来た。
太平洋戦争以来の、日米開戦勃発!
でもこれは、誤解や説明不足であった。
寅さんは人情の男である。しかも、同じ商売人同士。
寅さんとマイケルもひと度分かり合えば…。
カルチャー・ギャップや他国同士のいざこざ、国際交流…。
今のグローバル社会を先見していたかは不明だが、当時の日本の見方で興味深い。
寅さんの人情世界と巧みに絡ませ、天晴れでもある。
日米珍騒動が見所で、恋の方は…?
勿論。
マドンナは、満男の英語塾の先生の母親。演じるは、香川京子。(娘役は林寛子)
母娘共にアメリカで暮らしていた事もあり、英語が流暢。
寅さんとマイケルとマドンナの三角関係に…?
いえいえ、寅さんはマドンナにのぼせ上がるが、マイケルが恋するのは意外な相手!
さくら。
マイケルの気持ちも分からんではない。
だってさくらって、普通に美人で魅力的だし、優しく誰に対しても親身になってくれる。
もしさくらが血の繋がりの無い赤の他人だったら、寅さんは確実に惚れているだろう。
さくらはシリーズで一番の真のマドンナだと思っている。
寅さんの恋路はいつもながら。
さくらとマイケルの方は…。
クライマックス、マイケルが愛の告白をし、それにある応えをするさくらは、本作のハイライト。
エンディングでは寅さんからハガキが送られてくるのが定番だが、今回はアメリカに帰ったマイケルから。文面が寅さんと全く同じというのが笑わせる。
失恋し、故郷に帰ってからも売れない商売の旅。
アメリカの男もつらいよ。
とても楽しかった
マイケルがキュートだった。お芝居で自分とさくらを重ね合わせてみている場面に驚いた。ひろしが本人の知らないところで、何気にピンチを迎えていた。
さくらがもし家族を捨ててマイケルとアメリカに行ってしまった未来がありえたかと思うとぞっとする。そんなマイケルの持てなさっぷりがいいのだが、寅は誰にも告白はしていない。「俺と所帯を持つか」くらいは言うのだが「好きだ」とか「好きです」は言ってない。
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