「【後半明かされる、病弱なヒロインの事情を知り、心優しき寅さんを始めとしたとらやの人達の、彼女を気遣う言葉や心配する姿が心に響く作品。大女優、京マチ子さんの稚気ある美しさが余韻を残す作品でもある。】」男はつらいよ 寅次郎純情詩集 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【後半明かされる、病弱なヒロインの事情を知り、心優しき寅さんを始めとしたとらやの人達の、彼女を気遣う言葉や心配する姿が心に響く作品。大女優、京マチ子さんの稚気ある美しさが余韻を残す作品でもある。】
■満男の家庭訪問に訪れた若き産休代替講師、柳生雅子先生(檀ふみ)に恋心を抱き、余計な事をべらべら喋り、博に激怒されてしまった寅次郎。
家を飛び出した彼は長野県・上田の別所温泉で大盤振舞いをし、無銭飲食の罪で、警察の厄介になる。
さくらに連れ戻され、再びとらやに戻り猛省する寅次郎だったが、美しく病弱な雅子の母・綾(京マチ子)に出会い、瞬く間に夢中になってしまう。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・今作のヒロインは二人いる。雅子先生と母、綾さんである。寅さんはいつものように雅子先生にのぼせ上がるが、職工と呼ばれた博が珍しく”大学にも行けなかった僕が、満男にどれだけ期待しているか、義兄さんには分からないでしょう!”と激怒し、さくらからは”お兄ちゃん、自分の年を考えてよ。”とまで言われ、寂しくとらやを後にする。
・で、反省したかと思えば、いつも通りに上田の別所温泉で出会った馴染みの旅芸人一座と出会い、夜は寅さんの自腹で宴会をするが、そんな金がある筈もなく無銭飲食で警察に拘留されるのである。
ー この警察に拘留されているシーンが結構好きである。何故かと言えば、警官達は”示談になったのだから。”と寅さんを風呂に行かせたり、牧歌的なのである。罪を犯したとはいえ、寅さんを人間扱いする姿が良いのである。-
・柴又に連れ戻された寅さんは、今度はナント雅子先生の病弱だった母、綾に一目惚れする。しょうがないなあ、と思いつつこの人は本当に天真爛漫な人だなあと思ってしまうのである。寅さんは長年病院に入院していたがために、世間知らずの彼女のために精一杯尽くすのである。それは、おいちゃんが言うように、戦争成金に嫁がされた彼女の生い立ちもあったのかもしれない。
それにしても、綾を演じた京マチ子さんの変わらぬ美しさを観ると、しょうがないかなとも思うのである。京マチ子さん”と言えばは、私は黒沢明監督の「羅生門」の”真砂”を思い出してしまうのである。物凄い美しさ且つ強かさを持つ女性を演じていた故である。
■だが、綾の退院は病状が悪化してのモノで、雅子とさくらはそれを知りながらとらやで楽しそうに過ごす母の姿を見ていたのである。
女中を演じた浦辺粂子さんの姿も印象的である。
<綾が亡くなって、雅子が言った言葉”母は寂しい人生を送ったけれど、最後に僅かでも寅さんが傍にいて、どんなに幸せだったか・・。”を聞くと実に切ないが、併せて寅さんが綾のために、一生懸命尽くした姿(マア、殆どは源公がやったんだけど。)が、貴重なモノだったんだなあ、と思い返されるのである。
今作は、前半は寅さんの身勝手さが目立つが、後半はそれが実は余命幾許もない女性を温かく包んでいた事が分かる逸品なのである。>
初の親娘ヒロインパターンでしたね。檀ふみの映画って、これくらいしか記憶にない。
今日マチ子に限らず「男はつらいよ」シリーズに登場するベテラン俳優は皆味わい深い。志村喬しかり、宇野重吉しかり。