「大学教授もつらいよ」男はつらいよ 葛飾立志篇 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
大学教授もつらいよ
シリーズ16作目。
OPの夢は、西部劇。
酒場で女(さくら)が歌っていると、悪漢に絡まれ、そこへお尋ね者のタイガーキッドが現れる。
悪漢を倒し、「お兄ちゃん!」の制止を振り切り、去って行く。
今回は、本筋のメインマドンナに樫山文枝、序盤エピソードのサブマドンナに桜田淳子。
まず、序盤。
とらやに女子高生の順子が山形から訪ねて来る。
訪れた理由は、まだ見ぬ父に会いに。
そこへ帰ってきた寅さん。
お、お父さん…?
え~~~~~ッ!?
勿論、順子の思い違い。
十数年前、山形を旅していた時、冬の夜で無一文で行き倒れ寸前の所を助けてくれたのが、順子の母・お雪。
産まれて間もない赤ちゃんを背負い、見るからに苦労しながらも、親切にしてくれたお雪が、観音様のように見えたという。
言うまでもなく、この時の赤ちゃんが、順子。
恩を忘れず、お雪と順子へ欠かさず手紙と少ないお金を送り続けていたという寅さん。
さながら“足なが寅さん”。
この時の事を知らない順子は、ひょっとしてお父さんなのでは?…と、長年思っていたという。
順子が訪ねて来た理由がもう一つ。母の死を報せに…。
そんな順子を寅さんたちは豪勢な食事を注文して振る舞い、元気付ける。
当時人気絶頂だった桜田淳子が何と可愛らしい。
旅に出た寅さんは、山形へ。
お雪の墓参り。
お雪の事をよく知る住職から、学問が無いばかりに男に騙され、不幸と後悔の人生だった事を聞く。
他人事には思えない寅さん。自分も学問が無いから…。
住職から有難いお言葉を戴く。
人は何故学問に励むのか。それは、己を知る為。
影響受け易い寅さん。突然、学問に目覚める。
その頃、とらやには…
御前様の親戚で大学の考古学の助教授・礼子が下宿に。
聡明な美人。
こういう時に帰って来て…後の展開は想像通り。
学問に目覚めた寅さん、順子から勉強を習うが、何故か眼鏡を掛け始める。
眼鏡を掛ける=かしこい人、とバカ丸出し。
本当に学問に目覚めたの…??
Wマドンナと学問の目覚め以外は、過去作のあるあるの定番。
しかも、前作がリリーが再登場した名篇の一つ『相合い傘』、次作がシリーズ最高傑作の一つと言われる『夕焼け小焼け』で、その間に挟まれ、どうしても見劣りが…。
…いやいや、ある人物のキャラがいい味を出す。
ある日とらやを訪ねて来たのが、礼子の師で考古学教授の田所。
かなりお偉い先生で、何でも知っている。
おならを各国語で言え、テキ屋の商売文句もスラスラと。
が、超絶変わり者。
とてもとても大学教授に見えない髭もじゃでヨレヨレの格好。
常に煙草を口に加えているヘビースモーカー。煙草の煙と団子とお茶を一緒に飲み込む。
独り者で、礼子がまるで娘のように気遣う。
恋愛面も全然ダメ。途端にしどろもどろに。
寅さんに恋愛アドバイスされ、寅さんを師と仰ぐ。
寅さんも変わり者だが、この田所先生も負けず劣らずの変わり者。だから何故か妙に馬が合う。
小林桂樹が巧演。
本作一番の見所と言ってもいいくらい。
余談だが、小林桂樹は『日本沈没』でも“田所教授”だった。
皆で草野球をするほどすっかり仲良しに。
年末も近い。たまにはお正月をとらやで過ごすか…と、寅さん。
が…
田所には想い人が。言うまでもなく、相手は…。
それを知って、寅さんは…。
二人の男と一人のマドンナの恋の行方は…。
ラストシーンは、寅さんが旅先で本作の人物と再会するのがお決まり。
今回はてっきり順子かと思いきや、意外な人物と!
フラれた男同士の珍道中の旅が見てみたい。
“博士”じゃなくて“教授”でしたね(笑)
レビュー訂正します。
「日本沈没」の後の公開なので、この役名は狙って付けたんでしょうかねぇ…? 妙に気になってしまいました(笑)