「作品的には定番中の定番だが、意外な恋の結末!」男はつらいよ 寅次郎夢枕 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
作品的には定番中の定番だが、意外な恋の結末!
シリーズ10作目。
OPの寅さんの夢は、やくざに絡まれている酒場の女給(さくら)を“マカオの寅”が助ける。
日活の無国籍アクション風。
冒頭の柴又帰り。
またいつも通り喧嘩になりそうな所を、和やかムードに落ち着く。
お互い褒め合い、穏やか仲睦まじく、寅さんもまたまた真面目になろうとし、とらや一同は見合い相手を探す。
…と、まあ、それがかえって見てるこちらをハラハラさせる。
案の定、見合い相手探しは全滅、険悪ムードになって大喧嘩。
久々に「それを言っちゃあおしまいよ!」の台詞を残し、旅へ。
大抵旅先でマドンナと出会うが、今回出会ったのは、旧家の奥様役で出演のSPゲスト。
往年の大女優・田中絹代。
シリーズには度々超大物がゲスト出演する事があり(これまでにも志村喬、森繁久彌…)、山田洋次の映画少年心を感じる。
再び、柴又にて。
これで何度目やねん!…と思うくらい、寅さんの部屋が他人に貸し出し。
と言っても、マドンナではなく、御前様の甥っ子の東大の助教授。
東大でも十年に一人の秀才らしいが、はっきり言って変人。
無口、コミュニケーション能力ゼロ。とらや一同との夕食時も本を読みながら。挨拶されてもぶっきらぼうに「あ、どうも」…。
寅さんじゃなくとも不愉快になるわな…。
米倉斉加年が笑わせる。
今回のマドンナは、寅さんの幼馴染みの千代。
昔は寅さんに「らっきょ」とからかわれたようだが、見違えるほど美しくなり、近くで美容院を開いている。
演じるは、八千草薫。
この頃も、老境になった今も、可憐な少女のような魅力は変わらず。
二階には、寅さんの天敵、インテリ。
近所には、美人になった幼馴染み。
もし、寅さんが帰って来たら…。
こういう時に帰って来るのが、寅さん。
寅さんが千代にポ~ッとなるのは勿論として、ポ~ッとなった人物がもう一人。
インテリ先生。
面白可笑しくからかっていた寅さんだが、先生の想いが真剣だと知り、仕方ない、ひと肌ぬいでやるか。
千代にそれとなく伝えると、承諾。
が、千代は寅さんからの告白と思っていた。
千代は本気で寅さんに惚れている。
「寅ちゃんのお嫁さんになってもいい」
それを聞いた寅さんは…。
結果的に、先生も失恋し、マドンナも失恋し…。
寅さんがマドンナをフッたという意外な展開!
でも作品的には、OPの夢から話の中身/展開/あるある、旅先から送った年賀状に至るまで、これぞ寅さんの定番中の定番!とでも言うべき一篇。