「ハワイと恋騒動!」新・男はつらいよ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
ハワイと恋騒動!
シリーズ4作目。
本作も前作に続き、山田洋次は監督せず。
監督は、基であるTVシリーズの監督で、山田洋次と共に“寅さんの産みの親”である小林俊一が担当。
まるで2本立て興行のような、前半と後半で2つのエピソードが展開。
まず前半は、傑作爆笑エピソード“ハワイ騒動”。
競馬で大当たりし、大金を持って柴又に帰ってきた寅さん。
おいちゃん、おばちゃんをハワイに連れて行くという。
柴又中大盛り上がり。
まだ信じられないようなおいちゃんおばちゃんだが、カタコトの英語を覚えたりして、まんざらでもない。寅さんが覚えた英語は勿論、「I LOVE YOU」。
いよいよ出発日。柴又中総出でお見送り。
そんな時、事件発生!
担当の旅行代理店が寅さんの大金を持ち逃げ。
これだけ盛り上がって、今更本当の事なんて言えやしない。ハワイに連れてくと言った男の面子もある。
さあ、どうする、寅さん…!?
一旦は空港へ。で、夜になってとらやに戻って来る。数日息を潜め、何食わぬ顔で「只今帰って来ました!」…とやればいい。
本当なら暖かいハワイでのんびりしてる筈が、電気も点けられない音も立てられないとらやの中で寒々と…。
おいちゃん、おばちゃん、唯一事情を知るひろしは不安気。
それは的中!
とらやに泥棒が…。
取っ捕まえて警察に電話しようとするが…、いや、待て。
ここで電話してしまえばハワイに行ってない事がバレてしまう。
泥棒も図々しい奴で、こちらの足もとを見る。
仕方なく金を渡して追い払うが…、結局これでぜ~んぶバレてしまった。
柴又中の笑い者。
いつもながら大喧嘩。
泥棒が悪い、こんな嘘つくのが悪い、あの時点で正直に言わなかった事が悪い、金を持ち逃げした旅行代理店が悪い…。
おいちゃんがハッキリと。
賭博で儲けた金でいい思いしようとしたのがそもそもの問題。
地道に稼いでくれたお金で微々たる孝行してくれるだけでいい。それなのに…。
寅さんだって悪い事して儲けた金じゃなく、本当においちゃんおばちゃんに孝行したかっただけ。
そんな孝行思いが空回りし、一応金を盗まれた被害者で、寅さんも可哀想。
旅へ。
後半は、いつもながらの恋の騒動。
あれから一ヶ月。
旅の途中でちょいととらやに立ち寄った寅さん。
2階の自分の部屋で休もうとしたら、おいちゃんおばちゃんに止められる。
実は今、2階の寅さんの部屋は人に貸しているという。
寅さん、ショック…。そうか、俺にはもう帰ってくる家も無いのか…。
肩を落としてまた旅に出ようとした時、入れ違いで帰って来たのは、部屋を借りてる人物。
最近新しく来た幼稚園の美人先生・春子。(マドンナ・栗原小巻)
ハイ、一目惚れ。
とらや一同、またまた頭が痛い…。
春子の勤める幼稚園について行って、園児と一緒にお遊戯やお歌。
いつにも増しておバカ丸出し。
♪春が来た 春が来た 何処に来た
“春惚け”が来たのはアンタの頭の中だよ…。
とらやに家賃を払ってる春子。
それを引っ込めさせる寅さん。
あんな狭くて小汚い部屋で家賃を貰うなんてお門違い。逆にこちらからあんな部屋を使ってくれて感謝のお金を払うべき!…と真顔で言う。
もうやる事言う事メチャクチャ…。
春子にある不幸が。父の死。
が、疎遠で顔を見た事も無い父だったので、他人事のように振る舞っていたが…、
ある時悲しみに泣く。
そんな春子を元気付けようとする寅さん。
春子も笑顔を取り戻す。
その時は突然やって来た。
春子には恋人が。
今回もあっさりと…。
後の“メロン騒動”は有名だが、何か一つの出来事で騒動になるのは定番。
マドンナやゲストがとらやに下宿してひと騒動も、後の定番の一つ。
今回、専ら柴又が舞台。
フラれ、旅に出る直前、寝たふりしてるおいちゃんおばちゃんに語り掛ける寅さん。
またバカを見せちまった。
いつか必ず、孝行するからな。
しみじみと。
でも最後は、列車の乗客に自分の今回のバカを面白可笑しく語って聞かせる。
やっぱり寅さん!