「女の小箱」より 夫が見たのレビュー・感想・評価
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“生真面目”過ぎて可笑しくすら思える...
この監督の名前は以前よりいろんなところで見かけたが、実際に映画を見るのは初めてだ。
ショット、カット割り、ストーリー、セリフ…すべてが“生真面目”過ぎて可笑しくすら思える。
時代的制約か、とも思ったが
古くても見るに堪えるものはたくさんあるので
そういう問題でもなさそうだ…。
岸田今日子のBizarreな感じは可笑しくて良い。
“鬼才”らしいが、まったくその片鱗も感じさせない映画だった。
メロドラマに描かれる情欲と愛憎の凄まじさ
いわゆるメロドラマなんだけれど、情欲と愛憎の凄まじさが描かれていて、とても面白いです。
若尾文子そんが主演。その夫が川崎敬三さん。若尾さんを愛してしまう乗っ取り屋が田宮二郎さん。
実質的には、若尾さんと田宮さんのダブル主演。
田宮さんが演じる悪い男は、本当に素敵です。
産婦人科医を演じた町田博子さん、田宮の愛人を演じた岸田今日子さんが良かった。
若尾さんがかなり際どいところまで脱いでいて、半ばシルエットながら、バストトップまで披露していることに驚きました。
普通の主婦が豹変
冒頭の若尾文子の入浴シーン。湯船の中でもメイクばっちりだと思ったら、湯上りもやっぱりばっちり。さすが当時のセックスシンボル。こうした演出に当時の観客は納得していたのだろうか。でも、おかげでとにかく若尾が美しく、若さと成熟を兼ね備えた堪えられない色香を放っている。
田宮二郎が本当に若尾に心から惚れているのかどうか。ここが、この物語のサスペンスの要なのだろう。田宮が命を落とすことになるまで、そのあたりのことは不明なまま話は進んでいく。むしろ、そのキャラクター設定からして、大方の観客は、金のために無垢な人妻を手玉に取っているとしか見ないのではなかろうか。岸田今日子に腹を刺されたとき、こいつ本気で惚れてんだ!という驚き。ここまで、自他ともに認めるワルだったはずなのに、見事に観客は裏切られる。そして、若尾が夫と田宮を天秤にかけて、二人を自分の思うままに操り始めるとき、最高の武器を持った女の怖さを感じることになるのだ。
増村保造の作品を3本観たが、登場人物の強烈な自我の描き方にやっと慣れてきた感がある。小津や成瀬のお茶漬けさらさら的な味わいとは異なり、非常に濃い目ではっきりとした味付けだ。人物の手前に壁や生活用品を配することで、わざと画面の有効なスペースを狭くしている。そのことで、否が応でも観客は人物へ視線を集中させることになる。登場人物の放つ雰囲気を、画面の隅々まで漲らせるその手法を、この夏まだまだフィルムセンターで楽しむことができると思うと幸せだ。
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