「伊丹式葬儀マニュアル入門編」お葬式 しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
伊丹式葬儀マニュアル入門編
第8回日本アカデミー賞最優秀作品賞受賞作。
第58回キネマ旬報ベスト・テン日本映画ベスト・ワン。
"午前十時の映画祭13" で鑑賞(4Kデジタルリマスター版)。
端的に言えば、葬儀の始まりから終わりまでのお話。それだけなのに、どうしてこんなに面白いのか。伊丹十三監督の卓抜した脚本・演出の妙と、それに応えた俳優陣の素晴らしい演技の賜物以外のなにものでもないなと思いました。
初めての葬儀にすったもんだな遺族の姿や、集まった人々の悲喜交々が人間味たっぷりに描かれていて面白かったです。親戚からの口出しにあるあると頷き、通夜振舞いの切り上げ時のきっかけをどうつくるかとか、思い当たることしかない。
葬儀を扱っているのにきちんとコメディーで、5分に1回は笑わせてくれるようなつくりが楽しい。伊丹作品ならではの性描写が挿れられたり(千鶴子の漕ぐブランコが強烈なメタファー?)、きく江の挨拶に涙させられたり、巧みな緩急でした。
小津安二郎監督作品へのオマージュも感じられたし、適材適所に配された俳優たちがそれぞれ役をモノにして光り輝いていたことにも圧倒され、映画に精通した監督のセンスが詰め込まれた秀逸なエンターテインメントだと思いました。
誰もが必ず経験する身内のお葬式。私は曾祖母と祖母の葬儀を経験しました。いつの日か(悲しくなってしまうので考えたくないが)、両親を送らなければならない時がやって来る。両親は葬儀不要と言っているので侘助みたいなことにはならないかもしれないけれど、良い送り方が出来るようにしたいな…
[余談]
両親が交際し始めた頃にデートで本作を観に行った話を幼い頃から聞かされていました。子供の私が時を超え本作を映画館で観ることになろうとは、なんとも因縁めいたものを感じた次第。違っているのは、私はひとりで観たと云うところ(笑)。