「今こそ本作のリメイクが求められていると思います」お葬式 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
今こそ本作のリメイクが求められていると思います
親の葬式を出した経験の有る人も多いでしょう
本当に些細なことまでリアルなことが可笑しみを持って描かれています
葬式は故人を中心に社会構造や人間関係を凝縮してフラッシュを浴びせたかのように、見えないそれを可視化します
それ故に映画向きとも言えると思います
本作のように全編葬式という作品は珍しいですが、振り返って見ると結構お葬式のシーンのある映画は多いと気付かされます
1984年の公開作品です
考えて見れば団塊世代の親の葬式が多い時代だったのです
本作には葬式のあるある話だけでなく、団塊の世代の人々が社会の最年長世代になる戸惑いと不安がフィルムに写し撮られているのがわかります
無関心、というよりむしろ足を向けていた、古いしきたりとか伝統とかにも否応なしに順応しようと努力する姿は正にそれでしょう
それが本作をヒットさせた要因のひとつでもあったと思います
本作から35年の年月が流れました
今度は彼ら団塊の世代が葬式をだされる側となりました
急速な人口減少が報じられています
少子化はもちろんですが、団塊の世代が寿命年齢に近付いて来たからです
街中にはセレモニーホールと名付けられた葬儀会館が目に見えて増えてきた時代となりました
今こそ本作を再度見直してみるべき時期ではないでしょうか
本作で騒がしく走り回った子供達の世代が本作の主人公の年齢になったのです
社会構造も、人間の関係性も時代と共に変わりました
時代は平成は過ぎ去って令和となったのです
今こそ本作のリメイクが求められていると思います
映画関係者の皆様の奮起を期待致します
Mさん
確かにそうですね
すっかり変わってしまいました
コロナ禍では、死因がそうでなくとも葬式に大勢の人間が集まること自体がはばかられました
昨今ではお葬式も小さくなって家族葬も少しも珍しくもなくないのです
それどころか通夜もなく親族も全員揃わないなんて葬式もつい最近身近にありました
友人の中には、よい歳をしたお一人様の友人が男女何人かいます
家族や元家族とも音信不通になっている人もいます
孤独死という言葉が他人事でないと感じます
彼や彼女はもしそのとき、一体誰がお葬式を出してくれるのでしょうか?
え?自分!
そもそも、その死を誰が誰に知らせてくれるのでしょうか?
もしかしたら、残されたとても少ない年賀状から誰かが連絡をしてくるかも知れません
知らないとも言えず、それほどの親友という程でもないのに、自分が葬式を出してあげるしかないのかも知れません
本作の令和のリメイクはそのような物語になるのかもしれません
全く救いのない物語です
お葬式の形も今ではすっかり変わってしまいました。
通夜と本葬の差もなんだか曖昧になり、仕事のため本葬に行けない人が、夜に行われる通夜に多く来るようになったため、通夜の形も変わってしまいました。何より、家で葬儀を出す余裕もなくなり、死は日常から遠い存在になりました。
父の火葬の時には、薄い煙を見ながら「あれがお父さんの煙かな」などと思っていたのが、母の時には全く煙が出ず(環境を守るため)何か寂しかったのを覚えています。
今回、この作品を午前10時の映画祭で見ることができて、とても懐かしい気持ちがしました。