お琴と佐助のレビュー・感想・評価
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わてはこれでやっと、おっしょさんとおんなじになりました。
谷崎潤一郎の、とても文楽の世話物的なお話。かいがいしく仕える佐吉のいじらしさ。目が不自由なりにも芸事に精進するお琴の気高さ。どちらも一本筋が通っていて、言わずとも心が通い合うふたり。いけずな若旦さんが出てきて、そっちにいっちゃダメだよと危惧する方向へと進む展開は、まさに文楽のよう。結局、報われたのか、報われなかったのか。少なくとも二人は、己たちの運命を懸命に受け入れたのだろうなあ。山本富士子、きれいだった。
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愛の説明のわかりやすさ
1961年。衣笠貞之助監督。谷崎潤一郎の原作を映画化。伊藤大輔監督が京マチ子主演で撮った「春琴物語」と比べると面白い。まず、カラーであり、ワイドであること。広い空間に日本家屋の特徴的な柱や縁側や庭や襖が映り込み、人物を枠からのぞき込む構図。整然とした上品で落ち着いた空間で物語が進む。伊藤作品ではカメラがぶれたり、スモークがかかったりしていた。そして、春琴の「愛」がきちんと説明されている。伊藤作品では春琴の心の中は端的な謎であり、言動の意味は計り知れない(しばしば自分でもわかってないのではないか)のだが、今作の春琴である山本富士子は当初から佐助への想いを口にするし、媚態さえ表している。「拒絶の女」だった京マチ子とは大違い。この違いがおもしろい。また、音楽(琴、三味線)が本格的ですばらしい。
全体的に言うと、B級的で小ぶり、粗削りな魅力にあふれている伊藤作品に際して、洗練されてわかりやすい大作であり、A級的な衣笠作品ということになるだろう。
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