エノケンのホームラン王
劇場公開日:1948年9月7日
解説
エノケンプロダクションの独立と「醉虎伝」以来エノケン主演映画50本記念を祝して製作される新東宝提携作品。原作は『サンデー毎日』八月の大衆文芸号に掲載されたサトウハチローの『青春野球手帖』で、製作はエノケンの懇望により、従来最もエノケン映画を手がけた滝村和男が担当し、「唄まつり百万両」の岸松雄と監督の渡辺邦男が協同で脚色、渡辺監督は「今日は踊って」「誰か夢なき」「あの夢この歌」の前作がある。劇中プロ野球の巨人軍(ジャイアンツ)対阪神軍(タイガース)の試合が随所に織り込まれ、ジャイアンツ軍は俳優と混然一体となって、この映画の劇構成上重要メンバーとなって総出演している。春山美禰子はエノケンプロの新人で、島和子は渡辺監督が「今日は踊って」で発見した子役である。
1948年製作/76分/日本
劇場公開日:1948年9月7日
ストーリー
叔父夫婦の肉屋の店で働いている健吉は野球がメシよりも好きで巨人軍が大のひいきであり、同じ巨人ファンで自らジャイ床と名のる床屋のおやじとは意気投合しているが、何かというと阪神に肩を持つ魚屋夫婦とは犬猿の仲をなしている。今日の後楽園、巨人阪神戦は健吉が鍋をかぶった妙な応援が功を奏したのか巨人軍が勝ち、意気揚々ともどる健吉とジャイ床。それに引きかえ魚屋のウップンはやるせない。次の試合--健吉は魚屋夫婦とにらみ合ってラジオを聞くと、巨人が惜敗に終わる。これ見よがしに魚屋の店に出されたスコアボードに、憤激した健吉は店の牛肉を一にぎり魚屋めがけて発止と投げる。ところがねらい外れて魚屋の妹お千代坊に命中。このお千代坊こそ健吉が日ごろひそかに思いこがれているいとしい娘である。お千代とて健吉をにくからず思っているが、こと野球となると犬猿の仲の両家だけに結婚の出来ないのが悩みの種である。健吉のファンぶりに巨人軍の選手たちは好感をもち、ついに三原監督は健吉をマスコットとしてチームに加盟させる。背番号「零」の健吉のマスコットぶりはチームの和に役立ち、巨人の活躍の原動力となるがもちろん試合には一度も出られない。旅先からお千代のもとに届く健吉の手紙の数々を見つけた魚屋夫婦はお千代をきつく責めるが、かえって健吉の純情にほだされてお時はついにお千代の味方となり巨人軍びいきになってしまう。東京にもどった巨人は敗戦つづきで川上の打撃も一向にさえない。健吉はあるとき川上の母親の病気を知りお千代をつれて他の選手には内緒で看護に行く。一方健吉がしばらく顔をみせないので巨人軍はますます不調のうちに、強敵ライオンとの最後の試合にのぞむ、巨人はリードされて最終回、グラウンドにかけつけた健吉より母の病気全快を知って川上は、健吉たちのいるセンター後方めがけて快心のホームランをたたき込む。巨人は勝ったのである。