「今村版 罪と罰」うなぎ eichanさんの映画レビュー(感想・評価)
今村版 罪と罰
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今村昌平監督二度目のカンヌ国際映画祭パルムドール受賞作である。本作はキアロスタミ監督の「桜桃の味」との同時受賞であるが、同作に内容でひけをとっていない。浮気した妻を殺害した男の出所後の物語であるが、本人は犯した罪を反省していても後悔はしていない。突然町にやって来て床屋を開いた素性の知れない主人公の男を町の住民は温かく迎え入れる。それは主人公の実直さを自ずと感じてのことだろうか。主人公は仮出所の身であるが故、無用なトラブルに巻き込まれまいとするが、本人のその意志と反して半ば必然的に巻き込まれていく。本作はそれがストーリーでもある。好きだったから妻を殺した。それが故に今後女性とは関係を持たないと固く決意した主人公は、結局最終的に自らの子供ではない胎児を腹に宿している女性と一緒になって子育てをする約束を交わす。それは新しく出会った自分に思いを寄せる過去のある女性を愛して救済し、生まれて来る他人の子を、殺害した妻の生まれ変わりと感じて育てることで、自らの贖罪とし、亡き妻への鎮魂とするのであろうか。本作は人間の罪と罰という永遠のテーマに、今村監督なりに一石を投じようと試みる野心的な作品なのかもしれない。
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