宇宙大戦争のレビュー・感想・評価
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戦時下のニュース映画のよう…
1959年に公開された本作は、『Battle in outer space』というタイトルで欧米でも公開されている。
第二次世界大戦からわずか14年、まだまだ戦争の傷痕の癒えない日本において、早くも和製SFの輸出が始まっていたと考えると、先人たちの努力に頭が下がる思いだ。
和製ゴジラ映画にも使われた、かの有名な『宇宙大戦争マーチ』が全編で猛々しく演奏される。
地球人(大半が日本人)側の兵器は ″熱線砲″ をはじめ、宇宙人のそれにまったくひけをとらない。
テレパシーを操る異星人・ナタールと互角以上の戦いを繰り広げる。
おそらく、公開当時に見た人は日本人が世界をリードし、地球を守る姿に大いに溜飲を下げたであろう。
前半で見られる恋人同士の会話も、面白くかつ興味深い。
だが、「時代を超えて語り継がれるべき作品か?」というと疑問が残る。
前作の『地球防衛軍』も見たが、本作のほうが古い作品かと錯覚した。
特撮の出来映えは、当然のように『地球防衛軍』に負けないものがあるが、
・脚本(演者のセリフ、ナレーション)
・演出
など、作品の根幹をなすものが、とにかく時代がかっていて古臭いのだ。
まるで、戦前の時代劇を見ているようだった。
作中、ナタールに降伏せず、戦いを選択するくだりでは、
「祖先に対する礼儀であり、子孫に対する義務である」
という、あたかも戦時下のニュース映画を彷彿させるようなナレーションが大仰にインサートされる。
『地球防衛軍』で見られた旺盛なチャレンジ精神が、次作である『宇宙大戦争』には、あまりないように感じられた。
本作は世界中の初期のSF映像作品に多大な影響を与えているのは間違いありません 重要性は地球防衛軍よりも高いのではないでしょうか
いやあ、もう小松崎茂のイメージに酔いました
酔いしれました
この小松崎茂のSFメカと伊福部昭の景気の良いマーチ!
もうこれにつきます
誰しもが持っている少年の心が疼きます
目を輝かせて手に汗握って食い入るように観てしまいます
これを極上の味わいであると陶然と出来なければ本作を観る意義も意味ないでましょう
科学考証は部分的には取り入れられていますが全般的に目が行き届いてはいません
あくまで宇宙の大戦争のイメージが最優先されています
ストーリーも同様でとてもSFと言えたものではありません
それでも1959年の作品です
人類初の人工衛星は2年前、有人宇宙飛行は2年後の時点でこの映像を送り出したのですから、この宇宙の大戦争の映像は間違いなく当時の世界最先端だったはずです
世界中のスタジオがこれ以上のものを撮れなかったのはハッキリしています
殊に宇宙センターからの2機の宇宙哨戒艇の発進シーンは見事につきます
エレベーターで発射台を昇り宇宙艇に乗り組むシーンは、現実の有人飛行以前であるのにこのクオリティーで、部分的には目も覚めるほどの出来映えと考証をみせているのです
白い船内服、船内宇宙帽のカッコ良さには痺れます
これも見事な考証です
宇宙哨戒艇の噴射ノズルや月面車両も、良くみると、後半にはその表面にウェザリングまで施されているのです
これは特にアンダーソン作品に強く意識されて継承されていく要素です
そう言えば謎の円盤UFOのムーンベースの月面での宇宙服は本作のものに似ているようにも感じます
アメリカでは2年前に禁断の惑星というSF映画の不朽の名作を送り出してレベルの高さを示しています
本作の冒頭のクレジットの字幕が黒い宇宙を背景にして黄色の文字であるのは、その禁断の惑星へのオマージュであると思われます
しかし本格的なスペースオペラの宇宙戦闘を映像化するのは10年年後の宇宙大作戦まで待たねばならず、本当の宇宙での空中戦は20年後のスターウォーズまで待たなければならなかったのです
イギリスのアンダーソン作品はまだこれからのレベルでサンダーバードは6年も後になるのです
宇宙での戦闘シーンとなると謎の円盤UFOで11年後になってしまいます
本作は世界中の初期のSF映像作品に多大な影響を与えているのは間違いありません
宇宙センターのコンピューターの制御盤が壁面を埋めて無数の電球を明滅させるビジュアルはタイムトンネルなどのアーウィン・アレンの特撮もののルーツと感じます
タイムトンネル自体、本作の熱線砲のテストトンネルのビジュアルそのままです
宇宙センターの地下シェルターから宇宙戦闘機や熱線砲を地上に押し出してくるイメージはアンダーソン作品の海底大戦争スティングレイのマリンビル基地の元ネタになったように思えます
そしてそれはさらに後にエヴァンゲリオンの第3東京市に継承されていくわけです
宇宙哨戒艇の出撃式のシーンは宇宙戦艦ヤマトの乗組員が行進して乗り込む元ネタになっているようにも見えます、
女性が司令部や宇宙船の通信やレーダー手として活躍する場を与えられるのも本作が世界初だと思います
宇宙大作戦のウフーラ中尉や謎の円盤UFO のエリス中尉、宇宙戦艦ヤマトの森雪、エヴァンゲリオンの伊吹マヤも本作が無ければ存在し得たか分かりません
もっと言えばウルトラマンのフジ・アキコ隊員も本作が由来だと思います
冒頭の車輪型の宇宙ステーションは、当時良く未来の想像図に登場していたものですが、そもそもその想像図自体が殆ど全て小松崎茂が描いていたものです
それを映画として登場させ、遠心力による人工重力を得ているところまで見せているのは、2001の宇宙の旅に9年も先行していたのです
その2001年宇宙の旅にアート的な美術の影響を与えたチェコスロバキアの1963年のSF映画イカリエ-XB1と比較しても、本作の特撮はそれよりも数段以上優れていると断言できます
世界レベルで劣っていたのは、アート的な美術感覚、本格的なSFとしての重厚なストーリー、全編に神経を行き届かせた科学考証であり、これらは結局のところ現代に至るまで解決されていない日本SFの弱点です
ともあれ、1959年この時点で日本が送り出した本作のイメージは世界最先端であったのは間違いないのです
重要性は地球防衛軍よりも高いのではないでしょうか
荒唐無稽なイマジネーションと夢とワクワク!
久々に無性に見たくなった一連の東宝特撮SF。
「地球防衛軍」「宇宙大戦争」「海底軍艦」の3本を見ようとレンタル店数件回り、残念ながら「地球防衛軍」だけ見つからず。代わりに別の作品は幾つか発見。
追い追いレビューしていくとして、まず本作は…
「地球防衛軍」と並ぶ、東宝特撮本格SFの名作。1959年の作品。
何と言ってもこの作品、「シン・ゴジラ」のヤシオリ作戦でマーチ曲が使われて話題に。
話は単純明快な異星人地球侵略モノ。
国際宇宙ステーションが襲撃され、地球上では建造物が上空に引き上げられる怪事件が発生、国際会議の場には何者かに操られたスパイが。
遊星人ナタールの地球侵略の始まりに過ぎなかった…。
月の裏側に秘密基地を作り、地球侵略を企むナタール。
月に赴き、一戦交えた後、遂にナタールの地球侵略が開始。
人類は地球を守る為、迎え撃つ…!
一番の見所は言うまでもなく、円谷特撮演出。
中盤の月世界での闘いは比較的おとなしめだが、後半は円谷特撮演出の見せ場の連続。
宇宙空間での地球の戦闘ロケットとナタールの円盤の闘いはなかなかスピーディー。
重力を操るナタールの攻撃シーンは今ならCGで簡単かもしれないが、よくよく考えればミニチュア・操演・合成で見事に見せきったと感心する。
そして、円谷特撮演出に欠かせない伊福部音楽が高揚感抜群。
(それにしても…、数ある伊福部マーチの中でも“宇宙大戦争マーチ”は“怪獣大戦争マーチ”“地球防衛軍マーチ”と比べるとそれほど有名な方ではなかったが、「シン・ゴジラ」以降バラエティーでも使われたりしてこんなに人気曲になるとは…!)
人間ドラマ部分は池部良演じる主人公と安西郷子演じるヒロインの取って付けたような恋愛面はクッサイが、全体的には本多監督らしい生真面目な作風。
この手のSF作品の場合、製作国が地球を救ってバンザイ!となるが、ちゃんと世界の国々が一致団結して立ち向かっているし、一度ナタールに操られ我に返った土屋嘉男の犠牲的精神は平淡なドラマ部分で感動ポイント。
勿論、ツッコミ所は挙げ出したらキリが無い。
「ID4」級の侵略の脅威とスケールではあるのに、約60年も前の特撮作品だからかショボく感じる人も居るだろうし、ラストもあっさり。
でも、
1959年製作で劇中の時代設定は1965年。
ほんの数年先を舞台にして、今、こんなSF作品が作れるだろうか。
頭でっかちなSFになりがち。
荒唐無稽と言ってしまえばそれまで。
しかし、その荒唐無稽にイマジネーションと夢とワクワクがあった!
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