「奇跡のようなすれ違い」宇宙からのメッセージ MESSAGE from SPACE 因果さんの映画レビュー(感想・評価)
奇跡のようなすれ違い
これだけ鮮やかに技法と主題がすれ違っている映画も珍しい。
深作欣二といえば、対象の持つ自意識を無理やり引きずり出してしまうかのような暴力的でジャーナリスティックな接写だ。一方でスペースオペラというのは既に『2001年宇宙の旅』や『スター・ウォーズ』が示している通り、極端な引きやロングショットを多用することで、宇宙の悠久と雄壮を叙事詩的に語り上げている。
言わずもがな深作のカメラワークとスペースオペラのフォーマットほど折り合いの悪いものはない。故郷を賭けた壮大な戦争は、せせこましい画角の中でチンピラの小競り合いに堕してしまっている。普段であれば諸手を挙げて喝采を送りたくなるような小粋なセリフ回しも、ここでは叙事詩的荘厳を損なうスポイラーでしかなかった。
とはいえやはり、ここまで徹底的にちくはぐな映画はそうそうお目にかかれるものではない。そういうカルト的な意味では価値のある映画といえなくはないが、それなら『仁義の墓場』とか『いつかギラギラする日』のほうがよっぽど面白いしカルト的なんですよね…
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