「ちゃんとATGらしさも感じる「理不尽ホラー」」怪異談 生きてゐる小平次 Haihaiさんの映画レビュー(感想・評価)
ちゃんとATGらしさも感じる「理不尽ホラー」
1982年公開、78分の和製ホラー映画。
監督と脚本は中川信夫。
原作は鈴木泉三郎の戯曲。
1957年には東宝が『生きている小平次』というタイトルで映画化している。
青柳信雄監督、二代目中村扇雀、芥川比呂志、八千草薫主演という顔ぶれだ。
機会があれば見てみたい。
「非商業主義的な芸術作品」を売りにした、日本アート・シアター・ギルド(ATG)製作。
当時は、ATG作品を褒めれば ”映画通” みたいな空気もあった。
大胆な性表現に挑戦したり、シュールな脚本もあり、いま振り返ると、良作も多い。
本作もタイトルから、
”怪談” ではなく、”怪異談” としているあたり、なかなか肩にチカラが入っている感じだ(笑)。
登場するのは3人のみ。
小幡小平次:藤間文彦
那古太九郎:石橋正次
おちか:宮下順子
おや、
石橋正次って、こんなにイケメンだったっけ?
歌手もできるし、悪役もできるし、刑事や正義の味方にもなれる。本当に芸域の広い役者さんだ。
藤間文彦演じる小平次がまさに ”怪異” だ。
幼なじみの太九郎(石橋正次)に対して、
あくまで真顔で、至って正々堂々と、
「おまえの女房が好きだからオレにくれ」、
と言い募るのだが、繰り返し迫る「まじめイカれっぷり」が気味が悪いのを通り過ぎて、笑えてしまう。
怖がるべきだろうが、なぜか怖くない。
この理不尽さ、気味の悪さが意図したものなら見事なものだが。
ラストの着地の仕方もよく分からない。
おちかは、妖艶な宮下順子が演じている。
撮影時、33歳のはずだが、もっと歳上に見えてしまう。
宮下順子さん、好きな女優だが、本作は違う気がする。
1952年に東宝が製作したバージョンでは八千草薫が演じたらしいが、そちらはイメージしやすい。
冗長に感じるカットが多く、78分がとても長く感じてしまったので、☆1.5