「滅びゆく景色と女たちの群像」赤線地帯 しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
滅びゆく景色と女たちの群像
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Amazon Prime Video(シネマコレクション by KADOKAWA)で鑑賞。
売春禁止法制定目前の世相を背景に、赤線地帯・吉原で働く娼婦たちの群像を格調高き映像美で描き出した文芸作にして、巨匠・溝口健二監督の遺作となった名編。
特定の主役を設けず、5人の個性的な娼婦たちの姿を描く手法が秀逸でした。視点の切り替わる瞬間が自然な流れの中で行われて無駄が無く、テンポがとても良かったです。
不安を煽って来る劇中音楽は、まるで「ウルトラQ」のようで、得体の知れなさがハンパじゃない。赤線の異世界感も曲のイメージに加味されているのかもなと思いました。
様々な事情を抱えて体を売る女たち。生きるために。夢見るために。しかし、その仕事が失われようとしている。彼女たちは如何にして生活すれば良いのか?―金が無いと生きていけない。だが、その稼ぎの場所が無くなったら?
法案成立が流れたことも、単なる一時しのぎに過ぎない。滅びの足音は刻一刻と彼女たちに忍び寄って来ていました。しかし、体を売ることしか手段の無い女たちは、言い知れぬ不安を感じながらも街頭に立って客を呼び込む。
なんとも言えない切なさでした。
※修正(2023/03/27)
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