「いかにも清順そうな芦川いづみがヒロインなのだが、少し物足りない」あいつと私(1961) Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)
いかにも清順そうな芦川いづみがヒロインなのだが、少し物足りない
1961年製作/104分/日本、原題または英題:That Guy and I、配給:日活、劇場公開日:1961年9月10日。
中平監督は凄いという映画とそうでもないものに分かれるが、この映画は後者の印象。ただ、物語自体は、石原裕次郎家族がお母さんが美容師として成功した大金持ちで、夫がいながら恋人も出入りする最先端?家庭と、かなりユニーク。
主治公の石原裕次郎は、オープンカー(英国のオースチン・ヒーリーらしい)で大学に乗り付け軽井沢の別荘に友人を招く等、実際を反映した様な設定。さらに、母親が勇次郎の性処理係として秘書の渡辺美佐子をあてがっていたという、かなりぶっ飛んだ様な母・息子の設定。
学生運動に熱心な女子大生が吉行和子で、彼女が尊敬していた運動リーダーに犯されたと友人が夜中に彼女の下宿に転がり込む。お前が誘惑したのだろうと罵る吉行。挙げ句の果てに取っ組み合いのケンカとなる。リアルにありがちな話で、結構コワイ。
普通の家の大学生であるヒロインの芦川いづみは、泣き笑いしながらもこれらのことを十分に知った上で、裕次郎の母公認の恋人の座をゲットする。何処までも明るい裕次郎一家に惹かれて、渡辺美佐子を平手うちしたのみで、おおらかさも発揮した芦川。意外性もあり悪くないハッピエンド・ストーリーだが、華やかさや狡さには欠け、清純すぎる雰囲気のせいか、スター性はあまり感じられず、それがこの映画の最大の難点かも。「キューポラのある街」の前年で、妹役で後の大スター吉永小百合が出ていて、かなり強い印象を残していた。
監督中平康、脚色池田一朗 、中平康、原作石坂洋次郎、企画坂上静翁、撮影山崎善弘、美術
松山崇、音楽黛敏郎、録音片桐登司美、照明藤林甲、編集辻井正則、スチル斎藤耕一。
出演
黒川三郎石原裕次郎、黒川甲吉宮口精二、モトコ・桜井轟夕起子、浅田けい子芦川いづみ、浅田金吾清水将夫、浅田まさ子高野由美、浅田ゆみ子吉永小百合、おばあちゃん細川ちか子
野溝あさ子中原早苗、磯村由里子高田敏江、元村貞子吉行和子、加山さと子笹森礼子、金森あや子伊藤幸子、金沢正太小沢昭一、日高健伍伊藤孝雄、桑原一郎武藤章生、園城寺庄司永建、阿川正男滝沢修、松本みち子渡辺美佐子、高野教授。