劇場公開日 2007年10月27日

「ショカーには勝つが、物語に敗れたシリーズ」仮面ライダー THE NEXT てんぞーさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5 ショカーには勝つが、物語に敗れたシリーズ

2025年9月5日
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鑑賞方法:VOD

楽しい

興奮

難しい

初代仮面ライダーの平成リブート最終作。
デザインの良さは前作通り。初代の続編はコレしかない、という事で満を持して登場したV3は赤と緑の配色が相変わらずヒロイック。
生物×武器の融合が特徴的なV3怪人ハサミジャガーとチェーンソーリザードはエッジの効いた出渕デザインがとても馴染む。さらにショッカーライダーも大量投入で、全体的に画面映えが良い。
1号と2号のデザインは前作よりウェザリングを効かせた汚しが入っていて、2年間の激闘を想像させる。全身ピカピカのV3やショッカーライダーと対比になっているし、番組後半になるにつれスーツやマスクがくたびれていく昭和特撮の雰囲気も思い起こさせる。

アクション面は前作から全面的にアップグレード。特にショッカーライダー達は格闘戦・バイク戦のどちらにおいてもコンビネーション攻撃を多用して1号を追い詰めている姿が印象的。
チェーンソーリザードはチェーンソーをブンブン振り回してカッコイイし、ハサミジャガーはダブルキックとダブルパンチの二連撃で天井まで吹っ飛ばされて爆散するなどして、散り際が美味しい。

デザインとアクションが最高なのが相変わらずなら、物語が足を引っ張るのも相変わらず。
前作のラブロマンス展開から打って変わって今回はホラーに舵取りをしたが、原点回帰ではなくJホラー的なアップデートを加えてしまって大失敗。
初代ライダーのホラー要素は大雑把に言えばクリーチャーホラーなので、怨念・呪念が渦巻くJホラーとは同じホラーでもジャンルが違う。怪奇な存在をライダーが叩きのめすのが楽しいのであって、解決不能の〝呪い〟が本質のJホラーとは食い合わせが悪い。

ストーリーラインの方は風見志郎の妹でアイドルの「ちはる」を軸に展開。
ちはるの謎を追う親友の琴美、彼女の学校で教鞭をとる本郷武、何も知らないし活躍しないにも程がある志郎、物語中の全てに何の関係もない一文字。それはそれとして、裏切り者:本郷を狙うショッカー。
今回もまた、ちはる/ショッカーという独立した二軸がバラバラに稼動して、最後に何となくクロス。前作でダメだった部分をさらに加速させて、色々な「?」を残して通り過ぎていく。
ちはるの不幸のきっかけはショッカーだが、醜い姿にされたのはちはるの同僚が原因で、世間で活躍する偽物は事務所の陰謀で、怪異ちはるの正体は彼女自身の怨念・・・とにかく〝ちはる〟周りのアレコレが複雑すぎる。全部ショッカーの仕業にしてくれ。そしてその悪事をライダーが叩いてくれ。

前作も今作も、必要なのはややこしいドラマではなく、シンプルで普遍的な力強い王道の物語だったが、最後まで制作側がそれを理解することは無かった。
特大の傑作になるポテンシャルは十分に持っていたが、物語の構造が高く飛び立つのを許さなかった。
必殺技の外連味や、ライダー3人勢揃いの見得を切るシーンなど、決めるべき所は外さないので、まったく不遇ではあるが、仮面ライダーという存在の力強さだけは証明して見せたシリーズだった。

ちはる
風見志郎の妹で国民的アイドル。改造ナノマシンの影響で怪人化したものの、醜い姿に変貌した事を憂いて自殺を試みるが、怪人なので死ねずに怨念の力で怪異と化した・・・と思う。多分。よく分からない。脚本家ハッキリさせて。なぜショッカー基地の地下に居たのか?Jホラー怪異のちはるは何者なのか?結局ショッカーとの関係は?数々の謎を残したままV3によって倒された・・・と思いきや怪異ちはるの方は生き残っていた、というこの世で一番必要ないオマケEND。何があったんだ。気絶しながら脚本書いたの?
風見志郎
ちはるの肉親で兄貴でV3のくせして本筋には絡まない。ワインの開栓時期が悪いと怒ったり、ショッカーを止めるのがちはるの意思だ!などと言って終盤でショッカーを裏切ったりした。V3のくせに脇役。さっさとショッカーと戦え。
本郷武
高校で教鞭をとっているが、授業中は完全に学級崩壊。しかしクラスから浮き気味な琴美を心配して家庭訪問をしたり、ショッカーが来ないか心配でストーキングをする。お前はもっとショッカーの野望と戦え。
一文字隼人
前回のリジェクション設定のせいでずっと具合が悪そう。バーに一人取り残されたり、本郷に腹パンされたり、DVDの特典映像が死亡ENDだったり散々。高野八誠のスケジュール押さえるの大変だったのかな。
ショッカー
技術革新が進んでナノロボットで改造人間を作れるようになった。作中では一応負けているが、この世界のライダーはそんなにショッカーの野望を叩いたりしないので、そのうち世界征服は完了すると思う。頑張ってほしい。

てんぞー
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