「言葉の大きさが泣かせます」未来予想図 ア・イ・シ・テ・ルのサイン アマポーラさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0言葉の大きさが泣かせます

2007年10月9日

泣ける

幸せ

スペインのバルセロナ。この街をガウディの建造物抜きで語るのは難しい。だからこそ、一度でもこの街を訪れたことのある人たちは、この映画が提供する数少ないグエル公園やサグラダ・ファミリア寺院のシーンに大いに胸を揺すぶられることだろう。特に、ライト・アップされた寺院は、色彩的にも形状的にも夜空を焦がす花火にも似て美しい。横浜のベイエリアから打ち上げられる花火が、時空を超えて寺院の中空で炸裂するラストに近いシーンは、物語のハッピーエンディングを象徴する。
主役の松下奈緒は、顔の大ぶりな造作で随分と得をしている。目も口も鼻も大ぶりで、20代にも当然見えるし、30代と言われても頷ける。約10年という時の流れを、だから、いともたやすくこなしている。
アイシテルのサインを交し合う若き女と男。夢を見続けることを心から大切に思う女。そして、その女を一途に誠実に愛するがゆえに自身の夢を放棄しようとする男。女はある決断をする、男の夢を実現させるために。この映画では、その決断が全てだと言ってもいい。
寺院の内部で働く石工(加藤)の最初の台詞があまりに唐突でぎこちなく、出版社の編集長(石黒)が、いかにも作り物臭くてイマイチだが、あとは悪い出来ではない。ストーリー性には欠けていても、一つ一つの言葉の大きさが十分に泣かせる。

アマポーラ