「ジョディは稀に見る連続殺人鬼だ!」ブレイブ ワン trekkerさんの映画レビュー(感想・評価)
ジョディは稀に見る連続殺人鬼だ!
ニール・ジョーダンの作品に外れは無いとこれまでは確信してきたのだが、今作では「こんな仕事を受ける事もあるのね…」に変わった。
ジョディ・フォスターの演技とニール・ジョーダンの演出には何の不満もない。だが、ジョエル・シルバーが何故、今さら『狼よさらば』をやりたかったのか、何故、こんな脚本にジョディーとニールを起用したのかは大いに疑問。
ジョディとニールがやるからには、ただのビジランテものにはとどまらないメッセージ性を持った作品にしているだろうと思ったら…???このラスト!何のことはない、これまで何百本と作られてきたビジランテものと変わらない作品に終わっていた。
何しろ、ジョディは劇中で8人もの人間を銃で殺している。それも見せ場重視のアクション描写で。さらに復讐を果たすのは最後の最後で、それまでは殺す動機も必要もない場面での殺し。彼女のやっていることは、殺しの快感に目覚めた女の連続殺人にしか見えない。
察するに、はじめの脚本では、ここまで殺すシーンは多く無かったし、ラストでジョディは死んでいたのだろうと思う。だが、ジョエルが『タクシードライバー』風のアクションシーンを追加したり、ラストで主人公を殺さない今時の設定に変えたのではなかろうか?
ジョディとニールは、主人公の心理描写を丁寧に描くということに重点を置き、二人のおかげで何とか最後まで観ていられる作品には仕上げている。だが結果的には、そのウェットな人間ドラマの部分と、ばかばかしいB級タッチのアクションとのバランスが悪く、全体のバランスを崩してしまっている。
ばかばかしいとはどういう所かといえば、ジョディが闇取引で買った銃が最新型で高性能ということや1000ドルという値段にもリアリティが無いし、『狼よさらば』と同じ70年代なら分かるが現代のニューヨークでこれだけジョディの目の前で都合よく犯罪者が暴れるのもうそ臭い。ジョディが練習もしないで、どんどん射撃がうまくなるのもおかしい。ジョディがマンガみたいに無敵なのもアホらしい。ジョディが中盤で復讐したい相手の捜査をしないのも変。そもそも脚本がご都合主義なのだ。
そうはいってもジョディやニールのファンなら観ておいて損はしないはずだ。ジョエルが『マトリックス』で稼いだお金を二人のようなまともな女優や監督に投資するのはいいことだと思う。