「イイ映画なんだけどね~。」三本木農業高校、馬術部 mori2さんの映画レビュー(感想・評価)
イイ映画なんだけどね~。
青森県に実在する高校の馬術部を舞台に、盲目の馬と少女の交流を描いた実話「私、コスモの目になる!」の映画化。いい映画ですよ~、文句なく。昨今の殺伐とした空気を洗い流してくれるような、“良作”です。でもな~、何でこんなに(客が)入ってないのかね~??
昨年、吾輩が日本映画の1位に挙げた「夕凪の街 桜の国」の佐々部清 監督の作品ですから、『また清々しいほど美しく、朴訥して、どこまでも優しい映画になってるんだろうな~』と、予想しておったのですが、本作はその予想を遥かに上回っていました。四季折々様々な姿を見せる、青森の美しい自然を背景に、ひた向きに馬達と生きる馬術部員達の姿を、優しさ溢れるカメラワークで、とても生き生きと描き出しています。また特筆すべきはスクリーンを駆ける馬達の美しいこと!『サラブレッドは生きた芸術品』てなことを申しますが、正にその通りだと思います。決して派手ではございませんが、とても印象に残る映像の数々。心にじんわりと沁みてきます。
主演の長渕文音チャンは、長渕剛、志穂美悦子夫妻のお嬢さん。何とコレが映画初出演にして初主演!初々しくも、肝の据わった演技を見せてくれます。さすが芸能界のサラブレッド!女優として、これからが楽しみですね。でもどちらかと言うと、“父親似”なんですかね?授業中の居眠りから目覚めるシーンの表情なんか、ソックリでしたよ。う~ん、コレって女の子としては、どうなんでしょ…?
今回、キャストの中では柳葉さんが、素晴らしい!馬への熱い思いを胸に秘めつつも、それを普段は決して表に出さず、生徒たちに厳しくも優しく接する馬術部の顧問教師の役を、非常に抑えた演技で見事に演じておられます。特に自分の不在中の事故の為に、馬を死なせてしまったシーンの演技には、泣かされました。吾輩、個人的に次回の“日本アカデミー賞・最優秀助演男優賞”を是非とも差し上げたいと思っちゃいました。
ストーリーは、文部科学省のお墨付がもらえそうな(決して嫌味ではなく)“感動の実話”ですし、演出も俳優陣も素晴らしいの一語に尽きるのですが、冒頭にも書きましたが、何でこんなに不入りなんでしょう。吾輩が観たシネコンでは、全部で観客3人(平日・最終回)でした。同時期に公開された映画との比較では、本作は興行ランキングでベスト10にも入っておりません。これがミニシアター系、単館ロードショーの作品ならいざ知らず、一応メジャーである東映配給の映画なワケですよ。何とも寂しい話じゃないですか。一体なぜ東宝とこんなに差がついてしまったのか?松竹も、いま「おくりびと」で頑張っておられるだけに、余計に寂しく感じられました。確かに『いま、何故この映画なのか?』っていうあたりが、まったく我々には伝わってきません。そこら辺り、もう少し考えられて、宣伝、プロモーションをされた方がいいと思います。せっかく素晴らしい映画が出来上がっても、これではあまりにも可哀想ですよ。う~ん、もっとガンバレ!東映!!