「熱演が勿体ない。」ミッドナイト イーグル いきいきさんの映画レビュー(感想・評価)
熱演が勿体ない。
どうしてこんなに緊張感がないのか、
どうして描くべきところを描かないのか、
どうしてメロドラマになってしまうのか。
米軍のステルス爆撃機 ミッドナイトイーグルが、
北アルプスの上空で消息を立ち、偶然に墜落する赤い光を、
心に傷のある元戦場カメラマンの西崎(大沢たかお)が撮影。
西崎と飛ばされ新聞記者の落合(玉木宏)は、
命がけで必死になるほどの理由はイマイチ分からないが、
スクープを得ようと北アルプスへ向かう中で、
目撃したのは白迷彩で武装した自衛隊の列。そして、何者かに襲われる。
しかし、落合&西崎のコンビは自衛隊員がことごとくやられる中、
素晴らしい山のプロとしてのスキル、ではなく運の強さをみせる。
猛吹雪の雪山を舞台にして日本の安全を、未来をかけた戦いが、
特殊爆弾を巡る攻防がたいした緊迫感もなく行われ、
見事に1人だけ生き残った
民間人にキッチリ説明する自衛隊員の佐伯(吉田栄作)と、
自衛隊を説得できただけの見せ場もない山のプロというジャーナリストは、
標的にしてと言わんばかりの格好で、ヘリは帰れと言われれば帰り、
ワラワラと湧いてきた工作員との攻防の中、
西崎はお涙頂戴をたっぷりと演じる。
それと平行して描かれる雑誌記者の慶子(竹内結子)たちの
陰謀計画への取材過程で上司(石黒賢)は
どんな能力を駆使してるのか分からんが、簡単に工作員に辿り着き、
膨らましたら面白いんじゃないかという
工作員のドラマはセリフで簡単に語られ、
その後のおかしな展開が不思議でしょうがない。
もう一つの政府側の描き方も納得できない、説得力がない。
ベテランの役者をあと何人か入れてもいいのではないかと思ってしまう。
アクションを期待すると、たいした事のない銃撃戦のみで、
いくらなんでも簡単にやられてしまう自衛隊に悲しくなってしまう。
というか今の日本では自衛隊よりも米軍の方がおそらく先に動くでしょう。
それこそ 持たず、作らず、持ち込ませず という非核三原則からすれば、
存在してることも日本側は知らないんだろうから、
そうであって欲しいわけであるが、
そしたら米軍はもっとエグイことをしてくるだろう。
工作員と撃ち合うのは米軍であろう。
元戦場カメラマンという設定は憧れだけに、志だけに利用されたようで、
活かしきれていない。
生き残り自衛隊員を演じた吉田栄作の好演が、
メロドラマの前に悲しく消え去り、
竹内結子の母性を感じさせる表情はよかったけど、理想というか、
希望のようで何か軽い総理を演じた藤竜也の演技に、
そんな政治家は今の日本にいないだろうと思ってしまう。
いたとしても総理にはなれないだろうなと、演技はともかく、
それならまだキムタク総理の方がいいんじゃないかと思ってしまう。
自衛隊が映像の迫力を増すために貢献してくれていることは確かだが、
佐伯の自衛官に対する想いとか、自衛官になった経緯とかよりも、
語るべきところは、作品を面白くするために他にもあるだろう。
気を使いすぎだよ、おかしいよ。