「鎖は魂に自由に羽ばたくチャンスであった!」ブラック・スネーク・モーン 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
鎖は魂に自由に羽ばたくチャンスであった!
首都圏でも1館しか上映していない正真正銘の単館系作品ですが、以外とヒットしているというので見てきました。
冒頭と、ラスト近くに伝説のブルースマン、サン・ハウスの貴重な映像が挿入されています。そこで彼はこう語ります、「ブルースは、男女のもつれから生まれるのだ」。
これを語りたくて、クレイグ・ブリュワー監督はこの作品を作り上げたのでしょう。
ブルースの魂そのままフィルムに焼き付けたかのような荒々しさと、神々しさに満ち溢れており、見るもののハートを鷲掴みする作品でした。
主演のジャクソンは信仰が厚く、包容力のある優しい性格の裏に、揺るぎがたい親縁を持つ男を圧倒的な存在感で演じきっていました。
鎖でつながれた半裸の女を監禁する作品というと、なにやら日活ロマンポルノめいてきたり、バイオレンス映画かと思っていると、これが違うのです。
キリスト教の愛と許しという世界観を背景とした、どんなに悲惨な境涯でも希望を捨てないで!という感動作なんです。きっと、ラストシーンには予想もしなかった感動がありますよ。
どんなに悲惨かというと、レイの場合義父に性的な虐待を受けて、セックス依存症になったのです。ドラッグと酒に溺れ、男に殴られ、道ばたにポイと投げ捨てられるのです。 彼女の恋人ロニーも、トラウマがあって軍隊入隊後、追い出されれてしまうのです。
こんな夢も希望もなかった2人がどのように決意し、幸せを掴むのかがラストの見物ですね。
同じようなトラウマを負って苦しんでいる人は、この作品が救いとなることでしょう。
しかし、こんな美人を鎖で囲っておいて、ラザラスは一切手を出しませんでした。信仰者として立派です。途中から、ラザラスは鎖を解き放ちます。代わりにギターを持ち出しブルースを弾き語ります。それを聴き惚れていくレイ。ラザラスは鎖の代わりにブルースで、彼女の心を縛り付けたのでした。ハートのこもったブルースにはそんな力があることでしょう。
ところで、タイトルの「ブラック・スネーク」の意味するところは、心の中の黒い蛇に縛られると言うことです。文字どうり蛇霊に憑依されてしまっていることを意味します。 欲望への執着が強いと蛇霊に支配されますね。まぁタイトルにぴったりだなと思いました。
人はみんな自由になりたいといって、好き勝手なことをやります。けれどもレイのように欲望に溺れていって、かえって欲望に縛られてしまいどうすることもできなくなります。そんなレイをラザラスは鎖で拘束しましたが、それは自由を奪ったのでなく、彼女の魂に自由に羽ばたくチャンスをあげたのです。
いま悩みを抱えている人でも、感情に赴くままの生き方が悩みを作り、大きく強いる素になっていないかどうか考えてみるべきでしょう。その心に鎖をかけてやることで、きっと自由な未来が見えてきますよ(#^.^#)